[麻生氏『不信任』否決]それでも責任は免れぬ - 沖縄タイムス(2019年6月22日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/435977
https://megalodon.jp/2019-0622-1023-36/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/435977

野党が提出した麻生太郎財務相兼金融担当相に対する問責決議案と不信任決議案が、21日の衆参本会議で否決された。
麻生氏は、金融庁の担当大臣として自ら金融審議会に諮問してまとめさせた作業部会の報告書について、いったんは理解を示していた。
老後の生活費が公的年金だけでは足りず、2千万円不足するとの内容が大きな反響を呼び、選挙への影響を懸念する声が官邸や自民党本部に一気に広がった。
麻生氏は態度を一変させ、「政府のスタンスとは異なる」との理由で、報告書の受け取りを拒否した。
報告書にフタをして、なかったことにする、というわけだ。
自民党森山裕国対委員長は「報告書そのものがなくなった」と、党内にしか通用しないような意味不明の主張を展開し、衆参予算委員会での集中審議を拒否した。
こんな理屈が平然と主張され、混乱や不信を招いた責任も問われないのである。
参院では、委員の3分の1以上の要求があれば委員会を開かなければならない規則があるが、与党は、野党の開催要求を拒否し続けている。
麻生氏や自民党の対応のどこが問題なのか。
多くの国民が抱いている老後不安や年金不安に対して、丁寧に現状を説明し、制度の将来見通しについて国会で議論を深めるのではなく、その反対に、報告書をなかったものにして、議論そのものにフタをしてしまったことだ。
将来不安は膨らむ一方だ。

    ■    ■

財政制度等審議会は、19日の会議で財政運営に関する建議(意見書)をとりまとめ、麻生財務相に提出した。
原案にあった「将来世代の年金給付水準が低くなることが見込まれる」との指摘や、「自助努力を促していく観点も重要である」という表現がいずれも削除されていた。
こうしたことが重なると、国民は、都合の悪い事実を隠しているのではないか、と疑ってしまう。
5年に1度、明らかにされる厚生労働省の「年金財政検証」も、今年はまだ公表されていない。
野党の公表要求にもかかわらず、公表が遅れ、そのことが国民の疑念を生んでいるのである。
「なかったことにする」という政府の姿勢は、森友学園加計学園問題で顕著だった。意思決定過程が不透明で、説明責任が尽くされていないため、多くの疑念が今も解明されないままだ。

    ■    ■

森友問題では、財務省の公文書が改ざんされ、国会に「偽りの文書」が提出された。「平成の政治史に残る大事件」(自民党小泉進次郎)だった。
だが、麻生財務相は、大臣の座に居座ったままだ。麻生氏は、安倍政権のアキレス腱になりつつある。麻生氏には何よりもまず、上から目線の横柄な態度を改め、丁寧に説明することを求めたい。
年金が問題になっているというのに、自分がもらっているのかもらっていないのかさえ分からないというのは、浮世離れしている。