[党首討論]目に余る首相の不誠実 - 沖縄タイムス(2019年6月20日)

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国民の間に不安が広がる公的年金制度について議論を深める場だったにもかかわらず、内容の乏しい45分だった。目に余ったのは説明責任を果たそうとしない首相の姿だ。
今国会初となる安倍晋三首相と野党4党首による党首討論がきのう開かれた。
野党トップがそろって取り上げたのは、公的年金だけでは老後の生活費が2千万円不足するという金融庁の審議会報告書だ。
立憲民主党枝野幸男代表は「安心ばかりを強調し、国民の不安に向き合っていない」と政府の姿勢を追及。騒動になるや麻生太郎金融担当相が報告書の受け取りを拒否するなど「見たくない事実をなかったことにする」政権の体質を批判した。
首相は「大きな誤解が生じた」と釈明しつつも、「100年安心」をうたった年金制度の今後や、受け取らなかった理由を丁寧に説明することはなかった。
この問題で改めて浮き彫りになったのは、不都合な真実は封印してしまおうとする政権の体質である。重なるのは森友学園への国有地売却を巡る文書改ざん、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題などである。
報告書に関連して、国民民主党玉木雄一郎代表が年金財政の健全性をチェックする「財政検証」の公表遅れをただしたのはそのためだ。
安倍首相は「政局とは関わらず、しっかりと検証し、報告してもらいたい」と答えたが、人ごとのような言いぶりだった。選挙に勝つことを優先し参院選後に先送りしようとしているのなら「争点隠し」にほかならない。

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昨年6月以来、約1年ぶりの開催となった党首討論は、その形骸化も浮き彫りになった。
安倍首相の答弁は相変わらず論点のすり替えが目立ち、自らの実績をアピールする場面も多かった。野党の追及もいまひとつ迫力に欠け、議論はかみ合わなかった。
与野党トップが威信を懸けて直接対決する党首討論は、英国議会の「クエスチョンタイム」を参考に2000年に導入された。
与野党は14年に「月1回実施」で合意。しかし約束は守られず、45分という1回の討論時間の短さも指摘されている。
野党勢力が分散したこともあり今回一番長かった立民でも持ち時間はわずか20分。国会審議の活性化という当初の目的に立ち返れば、回数と時間を増やす必要がある。      ■    ■

党首討論では触れられなかったが、防衛省秋田市に計画している「イージス・アショア」を巡る報告書の誤りなど議論すべき問題は山積している。トランプ米大統領が日米貿易交渉の8月合意に言及したことについても、農業や畜産分野で大幅譲歩するのではないかとの疑念が広がっている。
国会は衆参両院とも3月から安倍首相が出席する予算委員会が開かれていない。
参院選を前に予算委を開催し、国民の疑問に答えるべきだ。国政の重要課題について有権者に判断材料を示す責任がある。


党首討論 (2019.06.19)