ホルムズのタンカー攻撃 危機の回避へ国際連携を - 毎日新聞(2019年6月15日)

https://mainichi.jp/articles/20190615/ddm/005/070/092000c
http://archive.today/2019.06.15-000848/https://mainichi.jp/articles/20190615/ddm/005/070/092000c

中東のホルムズ海峡付近で日本などのタンカー2隻が攻撃された事件を巡り、米国とイランが非難の応酬を始めた。両国の緊張がさらに高まることが憂慮される。
事件は安倍晋三首相が緊張緩和を促すためイランを訪問中に起きた。ポンペオ米国務長官は「イランに責任がある」と断じた上で、イランが「日本を侮辱した」となじった。
イランは関与を全面否定し、ザリフ外相は米国による「妨害外交」だと反発した。
米国はイラン側がタンカーから不発の水雷を除去したとする映像も公開した。プロパガンダ合戦は過熱している様相だ。
ホルムズ海峡は、海上輸送される世界の原油の約3割が通過するエネルギー供給の生命線だ。日本の輸入原油の8割強もここを通過する。民間船舶への攻撃など安全航行の観点から許されるものではない。
また周辺海域は、中東での覇権争いをしているイランと、親米国のサウジアラビアアラブ首長国連邦(UAE)が対峙(たいじ)する地政学的な要衝でもある。ここを紛争の発火点にしてはならない。
だが、既にサウジに対してはイエメンの親イラン武装組織フーシがミサイル攻撃などを続け、小競り合いによる緊張は広がっている。
国連安保理の非公開会合では各国から事件に対する非難の声が相次いだが、安保理決議や声明はまとまらなかった。グテレス国連事務総長ペルシャ湾海域での大規模な衝突を避けるため各国に自制を求めた。
今後の会合ではイランの関与の有無を巡り親米国と親イラン国の間で論争になることも予想される。しかし、海域の安定のために何ができるかを第一に考えるべきだろう。
まずは国連が主導し、事件の厳正な調査を進めるとともに、国際的な連携のもと、ホルムズ海峡の安全確保や危機の回避に全力を挙げなくてはならない。
今月28、29の両日には大阪で主要20カ国・地域(G20)首脳会議も開かれる。議長国である日本は、緊張緩和へ向けた外交を積極的に続けるべきだ。
国際社会が結束して動かなければ、取り返しのつかない事態に発展してしまう。