(政界地獄耳) 不正確で誤解与えた麻生発言 - 日刊スポーツ(2019年6月12日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201906120000141.html
http://archive.today/2019.06.12-005825/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201906120000141.html

★3日に金融庁が発表した人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書「高齢社会における資産形成・管理」は定年退職した後の人生が延びるため、95歳まで生きるには夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を示したことについて、当然国民の大きな関心事になる。副総理兼財務相麻生太郎は「人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ」と話し、「今のうちから考えておかないかんのですよ」と、あとは自分で何とかしろと丁寧に解説までつけていた。

金融庁は極めて冷静に現状を分析、夢のような社会はどこにもないことを示したが、参院決算委員会では首相・安倍晋三が「不正確で誤解を与えた」と、不適切としながらも撤回しなかった報告書を今度は与党が評価に値しないと攻撃し始めた。麻生は報告書を読んでいないと国会で白状したが、11日になってから、報告書を受け取らないという面白い策に出た。なかったことにしようというものだ。それは当然、自民党参院選選挙公約ともかけ離れているからだ。

★この手口を思い出した。森友・加計学園疑惑で近畿財務局の職員に押し付けた手口、F35の墜落を人為的ミスと断定し、墜落はパイロットのせいになった。戦闘機本体の問題ではないと結論づけ導入に支障がないようにする。公務員は国民のための公僕ではあるが、政治の弾よけや、犠牲になるためにいるのではない。それでも役人も甘んじて政治家にしがみつきたいのだろうか。今までも公文書改ざん、議事録紛失、そして責任を押し付けられてきた事例は多いが、今回は与党全体で金融庁のせいになった。「今のうちに考えとかんといかんのですよ」はどうした麻生。不正確で誤解を与えたのは麻生の態度と発言ではないのか。(K)※敬称略