[大弦小弦]「死なないで」と伝えたい - 沖縄タイムス(2019年6月5日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/428657
https://megalodon.jp/2019-0605-0910-25/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/428657

川崎市で児童ら20人が殺傷された事件で「死にたいなら一人で死ね」との指摘を巡る論争が続いている。テレビ番組のキャスターやコメンテーターの発言がきっかけだ

▼引きこもりがちだった容疑者が、殺害後に自殺したため「人を巻き込んで自殺するなら、一人で死んでほしかった」という趣旨。発言者たちは「容疑者に限定した言葉で、引きこ
もりの人を傷つける意図はない」と考えているかもしれない

▼引きこもりの経験者や当事者の声を発信する「ひきポス」が、こんな視点を提起している。「前置きをつけても、受け取る人にとって結論は『死ね』でしかない」

▼「人を巻き込むなら」と前提条件があっても、最後に放たれる冷酷な言葉が心に残る。部屋から出られない人に「自分は生きる価値がないのか」と無力感を突きつける危険性があ

▼元農林水産事務次官が引きこもりの長男を刺殺したとされる事件で、元次官は無差別殺傷の再発を恐れたという。子の孤立を周囲に相談できず、悲劇が連鎖した

▼国内で61万人の中高年が引きこもりとの推計がある。英国はメイ首相が昨年、孤独担当相を新設し対策に乗り出した。日本も、孤独に苦しむ人を支える社会のあり方が問われる
。川崎事件の加害者に声をかけたかった。「人を傷つけないで」「そして、あなたも死なないで」(吉田央)