[開かれない予算委]言論の府の責任放棄だ - 沖縄タイムス(2019年6月5日)

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国会は衆参両院とも、3月から、予算委員会が開かれていない。
衆院で予算案が通過したのは3月1日、参院で可決・成立したのが3月27日。その後は休業状態のままだ。
野党は予算委での集中審議を要求し続けているが、参院選を控え失点を恐れる与党は委員会開催に否定的な姿勢を取り続けている。
「選挙前に野党の見せ場をつくる必要はない」(自民党幹部)と本音をもらすが、本末転倒というしかない。
安倍晋三首相のもとで「外交方針の説明なき大転換」が進んでいる。
トランプ米大統領は訪日時に、日米貿易交渉の8月合意に言及した。選挙後に、農業や畜産分野で米国に大幅譲歩するのではないかとの疑念が広がっている。
北朝鮮政策について安倍首相はこれまで、「対話のための対話は意味がない」「必要なのは対話ではなく圧力なのです」と強硬路線を取り続けてきた。
ここにきて態度を一変させ、金正恩朝鮮労働党委員長との前提条件なしの対話を言い始めた。その説明もない。
プーチン大統領との個人的な関係を重視してきた対ロ外交も、交渉の行き詰まりが表面化している。
2019年版外交青書では、前年版にあった「北方4島は日本に帰属する」との表現が削除された。方針転換の説明は不十分だ。
経済政策「アベノミクス」にも暗雲が漂っている。
外交、経済の重要政策が軒並み変調をきたしている。

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森友学園への国有地売却額の公開を巡る訴訟で大阪地裁は、非開示決定の違法性を認定した。
大阪第1検察審査会は、森友学園を巡る決裁文書を改ざんしたとして告発され、不起訴処分となった佐川宣寿前国税庁長官に対し、「不起訴不当」と議決した。
森友問題はまだ終わっていない。
統計に対する信頼を著しく損ねた厚生労働省の統計不正問題もそうだ。
参院議員定数の「6増」などを盛り込んだ改正公選法も、新制度の具体的な内容を法務省令に委ねた改正入管法も、生煮えの議論のまま成立したものだ。
米軍普天間飛行場の危険性除去についても、いつ実現するのか、まったく見通しを示していない。
有機フッ素化合物の汚染問題についても、住民が大きな健康不安を抱いているにもかかわらず、基地内立ち入り調査は実現していない。

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肥大化した行政権力の下で、自民党も官僚組織も、「萎縮」と「忖度(そんたく)」が目立つようになり、国会は行政監視の機能を著しく低下させている。
重要な政策が変調をきたし始めているからこそ、国会は予算委員会を開き、政府に対し、情報開示と説明責任を果たすよう求めるべきである。
それすらできないようでは言論の府として失格だ。
予算委で丁寧に議論し、浮かび上がった対立点を参院選の争点にする-それがまっとうな国会の姿である。