万国津梁会議始動 知見生かして基地縮小を- 琉球新報(2019年6月1日)

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知事が有識者の意見を聞く「万国津梁(しんりょう)会議」が始動した。人権・平和をテーマにした第1回会合で、玉城デニー知事は、在日米軍の駐留の在り方、海兵隊をはじめとする在沖米軍の駐留の必要性などを再点検し、基地の整理縮小に向けて議論するよう求めた。
全国の米軍専用施設面積の7割が集中する沖縄の理不尽な状況を改善するために、建設的な提言を期待したい。
万国津梁会議の設置は知事選の公約だった。アジアをはじめ世界各国との経済交流や米軍基地対策などの促進を図るための会議である。
委員はテーマごとに選任される。人権・平和の分野では元内閣官房副長官補・柳沢協二、沖縄国際大准教授・野添文彬、米ジョージワシントン大准教授・マイク・モチヅキ、元外務省国際情報局長・孫崎享琉球大講師・山本章子の5氏が委嘱された。
政府は今まさに、名護市辺野古で米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地の建設を進めている。これについて委員長の柳沢氏は「知事の権限を超えたことを申し上げるつもりはない」と述べ、代替案を示さない考えを明らかにした。米軍基地の提供に責任を負うのは国なのだから、そうした姿勢は理解できる。
これに対し、政府は冷ややかに見ている。防衛省関係者は「代替案も出さず、何をするのか」と感想を漏らしたという。考え違いも甚だしい。なぜ、県が代替案を提示しなければならないのか。
おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦を経て沖縄を占領した米軍は、住民を収容所に押し込んだまま土地を奪った。普天間飛行場のある場所も戦前は集落が点在する農村地帯だった。戦後、収容所や避難先から住民が戻ったときには立ち入りができなくなっていた。
この土地を返す代わりに新たな基地が必要と言うのは、「盗んだ物を返すから別の物を寄こせ」と開き直る強盗にも似た態度ではないか。
2月の県民投票で示された沖縄の民意を踏まえ、代替策を示す責任があるのは政府の方である。
その点を度外視して、県に代替案を求めるのはお門違い以外の何物でもない。沖縄の基地問題が解決に向かわない要因の一つは政治家や官僚の認識不足にある。
万国津梁会議に求められるのは、それぞれの委員の専門的知見を生かし、沖縄に押し付けられている重い基地負担の軽減に向けて、具体的な方策と論拠を示すことだ。
それによって、政治家や官僚を啓発し、国民の間に基地問題への理解が深まるのなら、意義は大きい。
一方で、自由闊達(かったつ)に議論してもらうという理由で会議が非公開とされたことには疑問がある。基地問題は多くの県民の理解なしには解決しない。可能な限りオープンにし、広く認識を共有することが不可欠だ。