[パラシュート降下訓練]県内での中止を求める - 沖縄タイムス(2019年5月26日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/424533
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地元住民の安全をないがしろにし、米軍の訓練を優先する驚くべき発言である。
米軍嘉手納基地で実施されたパラシュート降下訓練について岩屋毅防衛相が「やむを得なかったと判断している」と訓練を容認した。
降下訓練は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で伊江島補助飛行場へ移転することが明記された。
米軍が地元の反対を押し切って嘉手納で強行するのは例外規定があるからだ。2007年、日米合同委員会で嘉手納が「例外的な場合に限って使用される」という抜け穴がつくられた。
岩屋氏は、伊江島での条件が整わず、5回中止したとする米軍に理解を示す。
17年に外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で政府が米側に「地元の懸念」を伝えた。歴代防衛相は嘉手納では行わないよう要請してきたが、岩屋氏は逆にお墨付きを与えた形だ。とうてい認められない。
看過できない点はまだある。米軍が悪天候でも訓練ができるよう大型救助船を導入しても嘉手納の降下訓練がゼロにならないとの見通しを示していることだ。今後も嘉手納での降下訓練を容認しているということではないのか。
沖縄の基地は民間地域と隣り合わせである。今回も住宅地上空を横切り、滑走路に降り立っている。一歩間違えば住民を巻き込む事故が起きる不安が拭えない。
伊江島でもたびたび提供区域外の畑などに落下している。沖縄での降下訓練はやめるべきである。

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例外の定義を巡り、河野太郎外相は今年3月、国会で「拡大解釈をすることは許されない」と答弁した。
具体的には(1)定期的ではなく小規模(2)悪天候などの制約により伊江島で行えない(3)喫緊の必要がある-ことを基準として例示した。
嘉手納での降下訓練は今年1、2月と連続して行われ、河野氏が基準を例示した後の5月も続いた。定期的、小規模の定義があいまいだ。
今回米軍は伊江島の「海象条件が悪く、救難ボートを運用できない」ことを理由に挙げたが、実際はダイビングが可能な海象条件だったことがわかっている。
米軍は48時間前の情報で決定していると説明する。
米軍の一方的な解釈でどうにでもなるような例外規定は撤廃すべきだ。

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県が欧州の地位協定と比較した調査によると、例えばドイツやイタリアでは米軍の訓練にはいずれも事前通告や両国の承認が必要である。地域の意見を吸い上げる委員会も設置されている。
日本では日米合同委員会という沖縄が関わることのない「密室」の中で決まっている。沖縄の声は、軍の論理を押し通す米軍と、米軍の運用に口を差し挟むことをしない政府との間に埋没しているのが現状である。
政府が呪文のように唱える負担軽減とは裏腹に負担増が実感である。沖縄の声に耳を傾け、米軍と本気になって向き合わなければならない。