<金口木舌>平和だからこそ - 琉球新報(2019年5月18日)

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艦砲射撃が地面を直撃すると鉄片が暴風のように飛び散った。破片によって住民の手足が切断され、ばたばたと倒れた。南風原町の女性から聞いた戦争体験だ。「鉄の暴風」と表現される沖縄戦の実態に背筋が凍った

▼おびただしい数の住民を巻き込み、日米が激しい地上戦を展開した沖縄戦。米軍の無差別攻撃、住民の根こそぎ動員、日本兵による食糧強奪、住民殺害…。12万2千人余の県人が命を奪われた
▼戦争がもたらすものは犠牲と破壊である。戦争を安易に捉えている国会議員がいる。日本維新の会を除名された丸山穂(ほ)高(だか)衆院議員だ。北方領土のビザなし交流訪問団に同行した際、元島民の団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と暴言を吐いた
▼批判を浴びて、発言を撤回した。除名処分を受けた後も議員は続ける意向を示している。見識を疑う
▼沖縄で穂高といえば、山川穂(ほ)高(たか)選手である。昨季の本塁打王プロ野球埼玉西武ライオンズの主砲として通算100本塁打を日本選手としては史上最速で達成した
▼第1子が生まれた15日、2発の祝砲を放つ。「娘の力じゃないか」と語った。本塁打王争いでパ・リーグのトップを走る。プロ野球は戦争で中断していたが、1945年11月、神宮球場での試合を機に復活した。スポーツ観戦で感動を味わえるのも平和があってこそである。