(冷たい視線) 機構も学生に寄り添った奨学金の在り方を - 北海道新聞(2019年5月14日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/304713?rct=c_season
http://archive.today/2019.05.14-004457/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/304713

満員電車で乗客が荷物を座席に置き、2人分のスペースを占領している。目の前に立つつえをついたお年寄りには知らんぷり。見るに見かね、離れて座る若者が席を譲り―。
誰もが見たことのあるような場面だろう。乗客の行為は法律違反ではないが、望ましいとは断じて言えない。違法ではないと高をくくっていると、冷たい視線という「罰」を受ける。
国の奨学金を貸与する日本学生支援機構は、冷たい視線だけでは済まされまい。奨学金を借りた本人と連帯保証人の親が返せない場合、保証人の親族らは未返還額の半分しか支払い義務がないのに、「知らんぷり」とばかりに説明せず全額を請求していた。
一方、「半額義務」を主張した人には減額に応じた。機構は、「半額の義務は保証人から主張すべきだ」とする。つまり、先方が言わない限り全額を受け取っていたのだ。
延滞が増え、運営が厳しいのは分かる。だがその結果、著しい不公平が生じている。法には触れないとしているが、一部には法令違反との指摘も出ている。これが学生を支援する業務を担う文科省所管の独立行政法人として、妥当なやり方か。
道内の保証人がきょう、返金を求め裁判を起こす。機構の取り立ての厳しさは度々指摘されてきた。もちろん、借りる側は「借金」という意識を強く持つべきだ。機構も学生に寄り添った奨学金の在り方を、ぜひ考えてほしい。2019・5・14