(卓上四季) 憲法を考える日 - 北海道新聞(2019年5月3日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/301907
http://archive.today/2019.05.03-034602/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/301907

長崎出身の歌手美輪明宏さんは戦争中、理不尽で悲惨な体験をたくさんした。原爆投下により地獄のようになったまちを、さまよい続けた経験もある。
だから「戦争放棄」を掲げる日本国憲法ができた時、もう逃げ惑う必要がないと、跳びあがるほど嬉(うれ)しかったそうだ。自著「戦争と平和」で訴える。「長いあいだ日本が戦争に引きずりこまれることなくこられたのは(中略)憲法に守られてきたからです」
憲法は第1章で「天皇」、第2章で「戦争の放棄」について記す。憲法学者の杉原泰雄さんは、戦争の放棄を第3章の「国民の権利及び義務」の前に置いたのは、「平和なしに基本的人権の保障もありえない」ためだと読み解く。
その「平和主義」が揺らいでいないか。安倍晋三首相は9条に自衛隊を明記する改憲論に意欲を見せる。「自衛隊は何も変わらない」と言うが、専門家からは「任務や権限が変わる恐れがある」との懸念も強い。安全保障関連法の施行から3年。防衛費は過去最大となり、次々と最新兵器の装備が進む。
本紙世論調査では、憲法について「改正の必要はない」は49%と「改正すべきだ」の41%を上回った。9条に絞れば「必要ない」は67%に上る。世論が全てとは限らぬが、その声に耳を傾けるのは政治家の責務である。
きょうは憲法記念日憲法は、9条は、どうあるべきか―。落ち着いて考える一日にしたい。2019・5・3