<金口木舌>「臭いもの」を暴く - 琉球新報(2019年5月3日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-912442.html
http://archive.today/2019.05.04-020206/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-912442.html

「いいかロックン・ロールを知らなきゃ もぐりと呼ばれるゼ/オレは10回ストーンズ見に行ったゼ」。歌手の森高千里さんの曲「臭いものにはフタをしろ!!」の一節だ。歌詞は続く。「昔話は苦手/本でも書いたらおじさん」「もぐりでいいのよ」「これがロックン・ロールよ」
▼突然、見知らぬ「おじさん」に呼び止められて説教されるのは理不尽だ。ロックは音楽の権威主義を相対化したはずだが、その周辺にも「おじさん」のような権威主義者が現れる。それを森高さんはさらに相対化し、ロックの本質を示す
▼年上の男性から年下の女性に投げられた言葉でもある。理不尽な言動の背後に不平等な関係性がある。曲名は「フタをしろ」だが、歌詞は不平等性を暴いている
憲法14条は法の下の平等を定める。ただ実際には女性の政治家や閣僚は少なく、企業の管理職登用も進まない。男女格差だけでなく、在日コリアンへのヘイトスピーチや沖縄への米軍基地の過重負担もある
▼本紙座談会で、識者は天皇制の問題点を「忘却」と指摘した。改元によって新たな時代が演出され、既存の問題を覆い隠してしまうことを指している。天皇という権威の陰で、問題を先送りする国民は主権者とは言えない
▼きょうは憲法記念日法の下の平等を実現し、差別をなくすために、権威主義から距離を置く必要がある。