[国交相 撤回取り消し]裁決の「公正さ」を疑う - 沖縄タイムス(2019年4月6日)

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石井啓一国土交通相が、県による辺野古埋め立ての承認撤回を取り消す裁決を下した。
沖縄防衛局が県への対抗措置として行政不服審査法に基づき審査請求していたもので、「県の撤回は違法」と判断された。
昨年10月に撤回の効力が一時的に停止されたことに続く決定である。これにより行政上、仲井真弘多元知事の「埋め立て承認」が復活する。
審査に際し県は、防衛局が私人の利益を救済する行審法を根拠に審査を求めたのは違法と訴えたが、「防衛局は一般私人と同様の立場で処分を受けた」とし退けられた。
国の機関である防衛局が国の機関である国交相に対し審査請求したことも「法令の規定に基づくもので、制度の乱用ではない」と結論付けた。
本当にそうなのか。
防衛省に「普天間飛行場代替施設建設事業推進チーム」が設置された2015年以降、国交省から同省へ出向した職員が延べ18人に上ることが明らかになっている。承認撤回の効力停止にあたり文書決裁に加わった1人は出向中の幹部職員だった。
撤回取り消しを受け、玉城デニー知事は「あたかも選手と審判を同じ人物が兼ねているようなもので『自作自演』だ」と批判した。
国交相も防衛相も安倍内閣の一員として共通の国策を担っているのだから、まさにその通りだ。
下された裁決は、県知事の裁量権を極端に狭めるような、都合のいい解釈である。

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県が昨年8月、埋め立て承認の撤回に踏み切ったのは、新たに軟弱地盤や活断層の存在が判明したからだ。
「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤について、石井国交相は「安定性を確保して工事を行うことが可能であるとの鑑定結果を踏まえた」と説明し、改良工事による対応が可能との見解を示した。
鑑定したのは地盤工学の専門的知見を有する研究者という。しかし改良は難しいとする専門家もおり、公正性と第三者性が保てる鑑定結果なのか疑問が残る。 
本島周辺に生息する3頭のジュゴンのうち、個体Bと名付けられたジュゴンの死骸が発見されたばかりだ。残るAとCも18年秋と15年夏を最後に姿を見せていない。
自然保護団体が土砂運搬船の影響など新基地建設との関連性を指摘しているにもかかわらず、裁決書は県の多方面からの訴えをことごとく退けている。ジュゴンAとCの広域調査や保護は行わず、工事の影響がないと言い切るのは説得性を欠く。

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新基地建設を巡っては環境アセスの段階から、記載されるべき内容が記載されないなど多くの不備が指摘されてきた。情報公開と公平性の確保は当時から尾を引いている問題である。
そもそも行審法は、強大な公権力から国民の権利救済を目的とした法律だ。
今回の裁決で浮かび上がったのは、国が国に審査請求し一方的な解釈で裁決を下す、という制度そのものの欠陥である。