(筆洗) ショーケン - 東京新聞(2019年3月30日)

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長身で、けんかが強い先輩は「ダイケン」と呼ばれていた。がらが悪いことで知られた高校の番長は「チューケン」。同じグループの三人目の「ケン」はそのため「ショウケン」と呼ばれるようになる。ショーケンこと俳優、歌手の萩原健一さん。無鉄砲をくり返す東京の不良たちの中から出てきた人である。
「チンピラがチンピラを演技しているんだから、こりゃ、本物だと思うよ」。かつて、対談の中でそう語っている。『太陽にほえろ!』の刑事をはじめ、型に収まらないような役の数々はなつかしい。
アウトローのにおいばかりの俳優ではなかった。表現への強い欲求とこだわりもまたこの人のものだろう。純朴な若者を『前略おふくろ様』で好演する。無口な若者の人物像に陰影を与える演技力は、やはり激しい人生の産物ではなかったか。
名声を得た後に、大麻不法所持の容疑で逮捕された。悔いて、四国巡礼に打ち込むが、その後も事件やスキャンダルで、世間を騒がせている。
激しい浮き沈みを経て、自著では、<おれは演じることでしか、世間様に罪滅ぼしができない>(『ショーケン』)と書いた。最近もドラマで健在ぶりをみたばかりだった。六十八歳で亡くなった。突然の別れである。
褒められないことは数多い。けれど、「ショーケンのような」と付けてみれば、不良の二文字、印象が違って見えてくる。