【私説・論説室から】真に憧れられる国に - 東京新聞(2019年3月25日)

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昨年夏、ベトナム中部の都市ダナンを旅した。南シナ海に面したリゾートホテルでは格安にアロママッサージなどのスパサービスが受けられる。現地の若い男女スタッフは愛想はそこそこだが仕事は丁寧。初体験の心地よさに浸りつつ「将来はこういう子たちに介護をしてもらうのもいいな」と漠然と考えた。
果たして昨年十二月、改正入管難民法が成立。単純労働分野の人手不足を補おうと外国人の新たな就労資格を設け新年度から受け入れを大幅に増やす。介護はその筆頭。五年間で五万~六万人の入国を見込むという。ただベトナムで接した有能な若者たちが、期待通りに日本の介護に携わってくれるだろうか。
日本人と同等以上の待遇が義務付けられているとはいえ、現状で介護職の平均月給は全業種平均に比べ十万円近く低い。弱者を支えるやりがいは大きいが、技術と体力に加え外国人にとっては相応の日本語力が必要だ。最近はサービス利用者や家族からセクハラ、パワハラを受けやすいことも指摘されている。
日本人介護職に対する抜本的な処遇改善をした上で万全な語学教育態勢を整えなければ、国のもくろみは外れる。そもそも介護を単純労働とみなしたことが間違いと思う。
ダナン空港とホテル間の送迎には、日本語学校に学ぶ男女が添乗してくれた。キラキラとした瞳で「いつかは日本に」と言う。憧れを裏切らない国でありたい。