[大弦小弦]誰が、どう間違えたのかが伝わらない。広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた… - 沖縄タイムス(2019年3月18日)

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誰が、どう間違えたのかが伝わらない。広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた「過ちは繰返(くりかえ)しませぬから」という誓いは、長く左右両派から批判されてきた

▼原爆を落とした米国も、アジアへの侵略戦争を始めた大日本帝国も名指ししない。みんなで反省して、責任の所在があいまいになった。「一億総懺悔(ざんげ)」の戦後日本を象徴する一文かもしれない

▼よく似た言葉が、強制不妊手術問題に対応する議員立法に入る。「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」。被害者は障がいを理由に断りなく体にメスを入れられ、命をつなぐ権利を奪われた。求めてきた「国」という主語は与野党調整で外された

▼根拠となった旧優生保護法議員立法だった。なぜこんな人権侵害がまかり通ったのか、国会が経緯を調査するが、第三者は入れない。ここでも免責の仕掛けは念入りである

▼実は、昨年この欄で「解決の機運も高まりつつある」と表現したことを悔やんできた。命や人生の被害は後から「解決」などできず、どんなに誠意ある謝罪も一部の穴埋めにしかならない

▼こんな法案なら、なおのこと。法案を作った議員は私たち有権者が選んだ。その責任を受け入れ、果たすために、国や国会のより大きな責任を追及していく。過ちは、もう繰り返させない。(阿部岳)