勤労統計不正 なぜ再調査しないのか - 東京新聞(2019年3月13日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019031302000158.html
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毎月勤労統計の不正を巡り、特別監察委員会がまとめた追加報告書へ批判が相次いでいる。不正を防ぐには原因解明が不可欠だが、依然として分からないからだ。これでは再発防止策ができない。
組織の不祥事を調べる第三者委員会の最終的な目的は再発防止策の提案である。
それには原因の解明が前提になる。だが、政府の取り組みは不十分と言わざるを得ない。
毎月勤労統計の不正を巡り厚生労働省の監察委が公表した追加報告書は、知らせるべき事実を記していない。
二〇〇四年から、調べるはずの東京都の対象を一部の抽出調査にしていた。減らしたデータの復元作業もしていなかったが、一八年に突然復元をした。
誰がどんな動機で不正を始めたのか、なぜそれが長年放置され途中で復元を始めたのかいまだ不明だ。追加報告書は担当者の姿勢を批判するものの、不正の背後にあるだろう組織の問題を解明していない。
追加報告書について各方面から批判がでている。総務省統計委員会は「再発防止策を考える際に必要な情報が著しく不足している」との意見書をまとめた。
日本弁護士連合会の第三者委員会ガイドラインの策定に関わった弁護士らでつくる任意団体「第三者委員会報告書格付け委員会」に至っては、九人全員が評価外の最低ランクをつけた。
組織的な要因を踏まえた真因への言及がない。そもそも厚労省から補助金を受ける外郭団体の理事長が委員長では独立性がないと厳しく指摘した。
追加報告書では再発防止策も示されている。だが、二十五ページのうち一ページに八項目が並ぶだけだ。これについても格付け委は具体性、実効性に疑問符をつけた。原因が分からないのだ、当然だろう。
国会審議でも原因解明が進んでいるとは言い難い。やはり政府から独立した人材による再調査をすべきだ。
再発防止には組織の問題をあぶりだし具体的な手だてを考えることが必要だ。その責任は政府にあるが、これだけの批判に対しても再調査をする姿勢を見せていない。国会で野党の追及をかわし、このまま関心が薄れるのを待っているように見える。
統計への不信は国の不信に直結しかねない。本来は政府を挙げて取り組む問題である。そのことを政府はもう一度、認識すべきだ。