(筆洗)「王子様」という名を改めたい - 東京新聞(2019年3月13日)

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米国のミュージシャン、プリンスの名は芸名のようだが、やはり音楽家だった父親が自分の果たせなかった夢を託して付けた本名だそうだ。音楽の王子様になれ。
その名は世界的に有名になるが、一九九三年、プリンスの名義はもう使いたくないと名前の代わりに奇妙なシンボルマークを使いはじめる。発音もできないマークでメディアやファンは「かつてプリンスと呼ばれたアーティスト」とやむなく呼ぶことに。当時の日本のファンには「元プリ」なる呼び名が懐かしいか。
プリンスはその後、本名に戻して活動したが、日本の「かつて王子様と呼ばれた若者」にはその気はなかったらしい。山梨県の高校三年、赤池肇さん(18)。親から付けられた、「王子様」という名を改めたいと甲府家裁に申し立て、最近、許可された。
お母さんが「唯一無二の王子様のような存在」と付けたそうだが、本人にはいろいろ差し障りがあった。想像に難くない。改名は奇抜なキラキラネームへの子どもの側からの「待った」であり、名前に悩む子どもに一つの選択肢を示した形になるだろう。
肇の名は経済学者の河上肇から取ったそうだ。「恵まれない人々の目線に立つ姿勢に共感した」
お母さんは改名を快く思っていないそうだ。お気持ちは察するが、おおいに自慢すべきではないか。「元王子様」は自分で考え、判断する若者に成長した。