国に5度目の賠償命令 原発避難者訴訟、横浜地裁 - 日本経済新聞(2019年2月20日)

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東京電力福島第1原発事故でふるさとでの生活を奪われたとして、福島県から神奈川県に避難した住民ら175人が国と東電に慰謝料など計約54億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁(中平健裁判長)は20日、双方の責任を認め、うち152人に計約4億1900万円を支払うよう命じた。
全国の同種訴訟約30件のうち8件目の判決で、国の責任を認めたのは5件目となり、司法判断として定着しそうだ。
津波対策を巡る国と東電の責任の有無や、国の指針に基づき東電が支払ってきた賠償額が妥当かどうかが主な争点。
横浜地裁を含めた一審判決で国も被告となった6件のうち、2017年9月の千葉地裁は東電だけに賠償を命じ、国への請求は退けた。
中平裁判長は、国は09年9月の時点で津波の到来と、それに伴う全電源喪失を予見できたと認定。「10年末までに非常用電源設備の移設などの対策ができた」と指摘し、水素爆発や炉心損傷による大量の放射性物質の外部放出という事態は回避可能だったとした。
また、原子力安全委員会などが東電の津波対策が基準に適合しているとした判断は「看過しがたい過誤、欠落があったというほかない」と非難し、国が規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠くと結論付けた。
横浜地裁の訴訟の原告は、125人が避難区域からの避難者で、50人が自主避難者。いずれも原則1人当たり、月35万円と、ふるさとを失った慰謝料2千万円を求めた。
原告側は、政府機関が02年に公表した地震予測の「長期評価」などから、国と東電は事故を予見できたのに、東電は対策を怠り、国は改善を命じなかったと主張。国と東電は「津波は予見できなかった」と反論した。訴訟では裁判官らが昨年2月、福島県南相馬市富岡町などの原告宅を直接訪れ、検証した。〔共同〕