<金口木舌>新しい時代 - 琉球新報(2019年2月20日)

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先日亡くなった作家で活発な評論活動でも知られた橋本治さんは1996年9月8日の県民投票の前日、沖縄にいた。その時のことを雑誌に載せた評論「基地とようかん」で書き残している

▼「法的拘束力があろうとなかろうと『われわれの問題はわれわれで決める』という、そういう新しい時代がやっと始まった」と橋本さんは記した。この一文に接し、初の県民投票を前にした当時の高揚感を思い出す
那覇市のパレットくもじ前の広場だった。読谷村にあった楚辺通信施設を模した「小象のオリ」を据えて高校生らの模擬投票をやった。沖縄の将来を自らが決めるという意思表明だ
▼同じ広場で17日夜、若者が開いた音楽祭をのぞいた。ラップに乗せた「ニイ・テン・ニイ・ヨン県民投票に行こう 沖縄のことを考えよう」というメッセージが心に響いた。新しい世代の登場を実感した。一つの変化だ
▼県内政党の対応は揺れた。96年の県民投票では棄権呼び掛けまで飛び出した自民党県連は今回、自主投票で臨む。「われわれの問題はわれわれで決める」という潮流から取り残されないか
▼国の態度も変わらない。橋本さんは「言ってみれば、『国』というものは、沖縄とアメリカが直接取り引きできないようにしているブローカーなんですね」と看破した。今の政府にも当てはまる。新しい時代は始まらないのか。