(筆洗) 平和賞への推薦は日本がトランプ政治を手放しで称賛しているように見えまいか。 - 東京新聞(2019年2月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019021902000152.html
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かのヒトラーノーベル平和賞の候補になったことがあると聞けば驚く人もいるだろう。ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発する直前の一九三九年のことだそうだ。
推薦したのはスウェーデン国会議員のエリック・ブラント。推薦文がふるっている。「ヒトラーは平和への希望」「地球平和のプリンス」。絶賛の限りを尽くしているが、無論ヒトラーへの痛烈な皮肉。この人、反ナチズムの政治家で平和賞への推薦でヒトラーをからかいたかったらしい。
その種の皮肉や冗談ではなく、どうやらマジメな推薦らしいと聞いて複雑な気分になる。安倍首相がノーベル平和賞にトランプ米大統領を推薦しているそうだ。
北朝鮮の核・ミサイル実験停止などでの功績を評価してということになろうが、問題の先行きは見えぬままで、それを評価するのは気が早かろう。ましてや世界を翻弄(ほんろう)する「分断の人」を「平和」と名の付く賞に推薦することへの違和感が消えぬ。
どういう経緯で推薦となったのかは分からない。米側の要請があれば断りにくい日本側の事情も理解できないではないが、平和賞への推薦は日本がトランプ政治を手放しで称賛しているように見えまいか。
首相は昨日の国会で推薦したかどうかを明確にしなかった。安倍さん自身、胸の張れる推薦ではないことをよく分かっていらっしゃるようにも見える。