福島原発事故1カ月後「避難者健康問題ない」 国の支援班文書 内部被ばく調べず - 東京新聞(2019年2月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2019021102000138.html
https://megalodon.jp/2019-0211-0936-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021102000136.html

東京電力福島第一原発事故直後の二〇一一年四月、経済産業省中心の特命班・原子力被災者生活支援チームが、避難者の被ばくについて「線量は十分少なく健康上問題無い」とする文書を作っていたことが分かった。事故発生から一カ月弱で、避難者の甲状腺内部被ばくを調べずに判断した。公表は見送られた。 (榊原崇仁)
文書は、同月八日の「放射線モニタリング・線量評価に関する連絡調整会議」の配布資料。「今般の原子力災害における避難住民の線量評価について」の題名でA4判一枚。環境省への情報開示請求で入手した。
内容は、空間線量の値を基に算出した外部被ばく線量の説明が中心。同年三月十二日の最初の爆発から二日余り、原発正門近くに居続けても「線量は一・二ミリシーベルト程度」と説明し、この間に避難すれば「線量は相当程度小さい」「健康上問題無いとの評価を提供可能ではないか」と記している。
さらに、原発がある福島県双葉町大熊町、隣接する浪江町富岡町は三月十二日中に避難を完了と指摘。一方、甲状腺の内部被ばくに触れたのは三行だけ。国の測定で健康に影響を及ぼす事例はなかったと記す程度だった。
支援チームで担当だった渕上善弘氏(現原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事)は取材に応じ、「甲状腺被ばくは国の測定データで評価できると判断したように思う」と述べた。国の測定は一一年三月下旬に実施。全員が甲状腺の内部被ばくの線量で一〇〇ミリシーベルト相当の基準を下回った。対象地域は三十キロ圏外で調べたのは千八十人だけだった。原発近くの地域から避難した人は除外されていた。
外部被ばくが全身に及ぼす線量については当時、国際放射線防護委員会(ICRP)の平常時の限度「年間一ミリシーベルト」にほぼ収まるという意識だったという。
調整会議は同年五月までに計三回開催。原子力安全委員会から「限られたデータによる推計」などと批判があり、文書は公表されなかった。支援チームは一一年三月末に発足。福島県の県民健康管理調査などに携わり、現在は帰還政策を担う。