<税を追う>基地騒音賠償 米の「踏み倒し」不条理 - 東京新聞(2019年2月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019020702000117.html
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在日米軍機を巡る騒音訴訟で、米側が賠償金の応分の負担に応じず、日本政府の肩代わりに多額の税金が投入されている。確定判決分だけで、少なくとも百五十億円以上に上る計算だ。日米地位協定に詳しい法政大の明田川融(あけたがわとおる)教授(政治学)は「米軍による被害なのに、自分たちの税金で賠償するようなもの。住民は二重の負担を負わされて不条理だ」と指摘する。地位協定のあり方や政府の姿勢が問われている。 (原昌志)
地位協定は一八条で、米軍の公務中に民間などへの被害が生じた場合、米国の責任割合に応じて賠償額の50~75%を米側が負担すると規定している。
賠償が確定した基地騒音訴訟では、自衛隊機が中心の小松(石川県)の例もあるが、ほとんどは米軍機の騒音。沖縄県の嘉手納(かでな)や普天間(ふてんま)をはじめ、厚木(神奈川県)や横田(東京都)も米軍機が主因だ。
にもかかわらず、政府は税金で米側の賠償を肩代わりし、米側は負担拒否の理由を明確にしていない。日本政府は国会答弁などで「日米安保条約の目的達成のために活動しており、米側が賠償するべきものではない」という米側の主張を説明。明田川教授は「日本側も同じ考えのため、負担を強く要求できないのでは」とみる。
「日米関係を損なわないために賠償金の負担はやむを得ないと、日本政府が考えているとみられても仕方がない。本来は住民を守るための安保条約なのに、条約を守ることが自己目的化している。本末転倒ではないか」と問題視する。
その上で「日米安保体制は現在、多くの国民が支持しているが、賠償金を『踏み倒す』ようなことまで受け入れられるのか。そもそも米側の責任であっても、25%を日本が負担することの是非も考えるべきだ」と指摘する。
日本弁護士連合会も二〇一四年に「まず米国が地位協定を守ることだ」とした上で、米側に責任がある場合は「全額米側が負担するべきだ」と協定の改定を提言している。
地位協定を巡っては、米軍人らが所有する自動車の税減免や、基地返還時に米軍が原因の汚染などがあっても、原状回復義務がないことなどが長年、問題となっている。