「統計不正」論戦 国会が解明してこそ - 東京新聞(2019年1月31日)

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安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が始まった。毎月勤労統計の不正問題を巡り、与野党がともに政府の責任を追及したが、国会が自らの手で解明に乗り出すことが必要ではないか。
二十八日に召集された通常国会で、党首クラスによる初の論戦である。冒頭、質問に立った立憲民主党枝野幸男代表が統計不正問題について「国家としての基礎が揺らいでいる」と指摘したのに続き、自民党二階俊博幹事長、国民民主党玉木雄一郎代表も原因究明と再発防止を迫った。
毎月勤労統計などの政府の経済統計は、政策立案の基礎だ。間違いがあれば、国会は誤った情報に基づいて法案や予算案の審議をすることになる。与野党が厳しく政府を断罪するのも当然だろう。
首相は「長年、誤った処理が続けられ、見抜けなかった責任を重く受け止める」と答弁した。
統計不正は二〇〇四年から約十四年間続いてきた。安倍首相はうち約半分の七年間政権を担っており、その責任はより重い。まずは自らの責任で、事実解明と再発防止に全力を挙げるのは当然だ。
とはいえ、この問題は政府任せにできない。国会も不正を見抜けなかった責任を免れないからだ。
枝野氏は厚生労働省と利害関係がない第三者が調査する必要性を強調した。立憲民主など野党六党派の国会対策委員長は同省の「特別監察委員会」の委員を入れ替えて再調査すべきだとしている。
外部の弁護士らで構成された特別監察委は、職員らへの聞き取りに同省幹部が同席するなど調査の中立性や正確性を欠いていると指摘されており、第三者による再調査も一つの手段ではある。
しかし、国会は国民から負託された国政に関する調査権を有し、行政監視の機能を担っている。国会が特別委員会を設置したり、参考人招致や証人喚問などにより、自らの手で事実解明や原因究明に乗り出すべきではないか。
政権与党の自民、公明両党は、この期に及んで厚労省を擁護し、国会による国政調査を阻むようなことがあってはならない。
根本匠厚労相は昨年十二月二十日に統計不正の報告を受けながら翌日、不正な調査方法を伏せて最新の数値を発表。同二十八日まで首相に報告せず、一九年度予算案閣議決定のやり直しを招いた。特別監察委の調査もずさんだ。
野党側が罷免要求したように、根本氏の閣僚辞任は当然である。首相も任命責任を免れまい。