社説)  立憲民主と国民民主 潰し合っている時なのか - 毎日新聞(2019年1月30日)

https://mainichi.jp/articles/20190130/ddm/005/070/073000c
http://archive.today/2019.01.30-035313/https://mainichi.jp/articles/20190130/ddm/005/070/073000c


「1強多弱」と言われる国会の状況を打開できるのか。野党の真価が問われる通常国会が始まった。
野党5党と1会派は国会初日に党首会談を開き、「安倍政権打倒をめざし厳しく対峙(たいじ)していく」ことで合意した。きょうからの代表質問では統計不正問題の追及などで各党党首らの論戦力が試される。
国会による行政監視で野党の果たすべき役割は大きい。「安倍1強」の数の力でうやむやにされないよう積極的な野党共闘が求められる。
しかし、表向きの党首合意とは裏腹に内情は寒々しさが漂う。立憲民主党と国民民主党の主導権争いだ。
通常国会の開会に先立ち、国民民主が自由党との統一会派結成に踏み切った。その結果、参院の野党第1会派に躍り出る見通しになると、立憲側がすぐさま社民党統一会派を結成し、双方27人ずつで並んだ。
野党第1会派になれば、国会における与党との交渉を主導し、国民に向けて存在感をアピールしやすくなる。だが、そのために数合わせを競って国民の理解が得られるのか。
国会開会直前に駆け込みで国民民主から立憲に移籍する議員まで現れた。国民民主側がそれを認めず非難合戦が繰り広げられるに及んでは、見苦しいと言うほかない。
民進党分裂時の遺恨がそう簡単に晴れるものでないことはわかる。国民民主の玉木雄一郎代表は自由党との統一会派について「野党の大きな塊をつくる」ことを目的に挙げたが、実態は逆だろう。立憲との亀裂はますます深まっている。
その背景には今夏の参院選へ向けた思惑が働く。野党党首会談では32ある1人区で共産党を含む候補者の一本化を図ることを確認したものの、改選数2以上の選挙区については立憲が候補者調整を拒んでいる。
近い将来の政権交代を訴えていくのであれば、参院選で本格的な与野党対決の構図をつくることが必要だ。しかし、最大野党として選挙協力に汗をかくべき立場にある立憲の枝野幸男代表は、国民民主を蹴落としてでも野党内での優位を確保しようとしているように映る。
これでは安倍政権と対峙する前に野党同士で潰し合っているようなものだ。大局観のない政党に国民の期待が高まるはずがない。