メトロ銀座駅 戦時下の「記憶」 空襲の補修跡、工事で露出 - 東京新聞(2019年1月25日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201901/CK2019012502000118.html
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空襲の補修跡(左側)が露出した東京メトロ銀座線の銀座駅。赤茶色の鉄骨が数本壁に埋め込まれ、上部に横向きの太い鉄骨が見える=24日、東京都中央区

東京メトロ銀座線の銀座駅(東京都中央区)のホーム壁面が駅改良工事のため化粧パネルが外され、74年前の銀座空襲の痕跡が露出している。
銀座線は戦前から営業していた都内唯一の地下鉄。都心部に初めて甚大な被害をもたらした1945年1月27日の「銀座空襲」では、銀座駅にも爆弾が落ち、天井部分に大きな穴があいた。現在の銀座線ホームの浅草方面行き側の新橋寄りだ。
ホームから壁を見ると、爆弾落下地点とされる壁だけは他の部分と明らかに形状が異なっている。ホームには等間隔に壁から天井までつながったアーチ状の鉄骨の梁(はり)が並んでいるが、ここだけはアーチがなく、代わりに壁に赤茶色の鉄骨と、それらをつなぐ横向きの鉄骨が埋め込まれている。さらに他の壁はくぼんでいるが、ここだけが出っ張っている。
東京メトロの広報部は「空襲を受けたのは確かだが、正確な補修工事の記録が残っていない」と断言を避けるが、昨年12月に同人誌「戦ふ交通営団 戦時下の地下鉄」を発表した都市交通史研究家の枝久保達也さん(36)は「今までも不自然な形をしていたが、壁が露出したことで、どういう補修をしたのかはっきりわかった」と話す。執筆するために多くの文献をあたった枝久保さんは、鉄の入手が困難な中、ふぞろいな鉄骨とコンクリートで壁を補強し、新たな梁を架けて天井をつけたと推測する。
東京メトロによると来年3〜5月に壁は再び覆われる予定。枝久保さんは「戦争中も地下鉄は走っていて、復旧させようと当時の人が努力した“記憶”がここにある」と見える形で後世に伝えることを希望している。 (宮崎美紀子)