(斜面)参院選で導入される比例代表の「特定枠」- 信濃毎日新聞(2019年1月21日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190121/KT190120ETI090001000.php
http://archive.today/2019.01.22-000246/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190121/KT190120ETI090001000.php

木に竹を接ぐという言い回しがある。性質の違うものを接ぎ合わせる意から、つじつまの合わないこと、筋が通らないことの例えに使われる。今夏の参院選で導入される比例代表の「特定枠」は、まさにそんな制度である

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本来、比例代表は候補者のうち個人名の得票が多かった順に当選者が決まる。その例外になるのが特定枠だ。得票数に関係なく、優先して当選させたい候補を各政党が決められる。自民党は合区の「鳥取・島根」「徳島・高知」で選挙区に擁立できない現職を救済するために使う

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性質の違う制度を接ぎ合わせた結果、おかしなことが起こる。特定枠の候補よりも多くの票を得た候補が議席を獲得できない逆転現象だ。これを知られるのは具合が悪いとの判断だろうか。特定枠の候補がどれだけ票を得たかは公表しない方向とされる

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比例代表は当初、各党があらかじめ候補者に順位を付けておく仕組みだった。今のやり方に変わったのは2001年だ。自民などの与党が野党の反対を押し切って制度を変えた。18年たって今度は特定枠として強引に元の制度を一部復活させる。あまりにもご都合主義ではないか

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投票所には特定枠候補の名前も掲示し、有権者が候補名を書ける環境を整える予定だという。それでいて結果が明らかにされないのでは、ちぐはぐだ。「1票の格差」是正のための国会論議で自民は合区の救済策を抱き合わせた。お手盛りの制度のいびつさは隠しようもない。