同性婚訴訟 法の下の平等が問われる - 信濃毎日新聞(2019年1月16日)

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190116/KT190115ETI090004000.php
http://archive.today/2019.01.16-014257/https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190116/KT190115ETI090004000.php

憲法24条は「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と規定している。これにより同性同士が婚姻関係を結ぶことを否定できるのか―。これを問う訴訟が来月中旬、一斉提訴される。
踏み切るのは全国の同性カップル10組である。
同性婚ができないのは憲法が保障する婚姻の自由を侵害し、法の下の平等に反するとしている。国に損害賠償を求め東京地裁名古屋地裁など各地の裁判所に訴える。同性婚を求めて当事者のカップルが国を提訴するのは、初めてのケースとみられる。
憲法解釈はさまざまだ。裁判所は双方の主張に慎重に耳を傾け、判断してほしい。
訴訟では憲法24条の「両性の合意」が何を指すのかが争点だ。
政府は24条について、同性婚を想定していないとの見解を示している。男女の婚姻を規定しているとの解釈も根強い。
弁護団は「同性婚を禁止した規定ではないと解釈できる」と主張する。旧民法では婚姻には父などの戸主の同意が必要だった。このため、憲法学者には24条は「当事者のカップルが自分の意思で結婚できること」を規定しており、同性同士の婚姻を否定していないという解釈が出ている。
法の下の平等を規定する憲法14条は、人種、信条、性別、社会的身分などにより差別されないと規定する。同性婚を認めないのは差別なのかが問われる。
同性婚は2001年4月に世界で初めてオランダで認められた後、欧州を中心に広がった。アジアでも今年5月に台湾で認められることになっている。現在は先進7カ国(G7)で日本だけが、同性婚やこれに準じた制度を法制化していない。
国内では自治体が同性カップルなどを公認する同性パートナーシップ認証制度が広がりつつある。それでも通常の夫婦と同様の税控除を受けられず、相手が死亡しても遺産を相続できない。
考えなければならないことは、同性や両性を愛することは趣味趣向ではないことだ。生まれ持った性質であり、変わることはないというのが通説である。
異性を愛する人も、同性を愛する人も権利は同様であるべきだ。電通が全国6万人を対象に昨年10月に実施した調査では、8割近くが同性婚に理解を示した。同性婚のパートナーを配偶者として処遇する企業も増えている。社会は実情に即し対応しつつある。裁判所の見識が問われる。