強姦冤罪事件、国賠請求を棄却 大阪地裁 -毎日新聞(2019年1月8日)

https://mainichi.jp/articles/20190108/k00/00m/040/098000c
http://archive.today/2019.01.08-062643/https://mainichi.jp/articles/20190108/k00/00m/040/098000c

強姦(ごうかん)罪などで服役中に被害者の証言がうそと分かり、再審無罪が確定した大阪市内の男性(75)と妻が、不十分な捜査や裁判所の誤判で精神的な損害を受けたとして、国と大阪府に計約1億4000万円の国家賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は8日、請求を棄却した。大島雅弘裁判長は「通常要求される捜査を怠ったとまでは言えない」と判断した。男性側は控訴する方針。
判決などによると、男性は2008年、10代だった同居の親族女性に性的暴行をしたとして逮捕、起訴された。一貫して否認したが、大阪地裁は09年、被害を申告した女性や目撃者の証言の信用性を認めて懲役12年を言い渡し、11年に最高裁で刑が確定した。
しかし、男性が服役中に「証言はうそだった」と、この女性が弁護士に告白。14年に男性が裁判をやり直す再審を請求し、大阪地裁が15年に無罪を言い渡した。
今回の国賠訴訟では、男性側が「大阪府警大阪地検が無罪を示す証拠の捜査を怠った」と主張。捜査時の医師の診察では性的被害を示唆する診断書が出た。ところが、女性が家族と受診した別の医師は被害を否定しており、女性の告白後の再捜査でそのカルテが見つかった。
判決は、さらに捜査すれば女性の証言の信用性が揺らいだ可能性を認める一方、証言と矛盾しない診断書があった点を重視。「証言は具体的で信用できた」として、捜査や裁判所の判断に違法性はなかったと結論付けた。
男性は逮捕から6年余り拘束され、仕事も失った。判決後の記者会見で「警察や検察、裁判所は自分たちの間違いを認めない。なぜ有罪になったか反省しなければ、また冤罪(えんざい)の被害者が生まれる」と憤った。【戸上文恵】