韓国艦レーダー照射で動画を公開 防衛省 - 毎日新聞(2018年12月28日)

https://mainichi.jp/articles/20181228/k00/00m/010/178000c
http://archive.today/2018.12.28-111517/https://mainichi.jp/articles/20181228/k00/00m/010/178000c

韓国海軍の駆逐艦海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、防衛省は28日夕、当時の動画データを、同省ホームページで公表した。
公開された動画は20日午後3時過ぎ、石川県能登半島沖を飛行する哨戒機から、韓国海軍の駆逐艦などが航行する様子を撮影。「離隔する。一旦離隔する」「めちゃくちゃすごい音だ」などと機長らによる緊迫したやりとりが収められている。
レーダー照射は攻撃の前段階として目標に電波を当てて追跡するもの。「ロックオン」と呼ばれて、攻撃の意思がなくても、不測の事態を招きかねない極めて危険な行為とされる。防衛省はデータを解析し、複数回にわたってレーダー照射を受けたと結論づけていた。
一方、韓国国防省のこれまでの説明内容は変遷している。当初、北朝鮮の漂流漁船を捜索するために、全てのレーダーを使ったと主張。その後、防衛省から反論されると、火器管制レーダーについては「光学カメラを稼働させただけ」などと使用自体を否定するなど、双方の主張は平行線をたどっていた。
岩屋毅防衛相は28日午前の閣議後記者会見で、海自は国際法などにのっとり、韓国側が主張する低空飛行などの危険行為はなかったことを動画データで示すとの考えを示していた。
岩屋防衛相は、動画データの公開に踏み切った理由について「日韓関係の修復は最終的に必要だが、自衛隊側に問題があるような韓国側の言いぶりは遺憾だ。国民に誤解なきよう、きちんと説明する必要がある」と語っている。
これに関連して、菅義偉官房長官も28日午前の記者会見で、韓国側の最近の動向に関して「日韓関係に否定的な動きが相次いでいることは大変残念だ」と述べた。 【中澤雄大/統合デジタル取材センター】

韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について

海自機、周波数証拠は「機密」 =駆逐艦撮影中にレーダー照射−防衛省 - 時事ドットコム(2018年12月29日)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122900193&g=soc
http://archive.today/2018.12.29-050815/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122900193&g=soc

海上自衛隊のP1哨戒機が韓国駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けた問題。防衛省が公表したP1が撮影した13分の映像には、眼下の駆逐艦を監視中、突然照射され「FCコンタクト」(火器管制レーダー探知)」「砲はこちらに向いていない」などの音声が記録され、機内の緊迫した状況が収められている。映像公開を受け、韓国側はP1が収集したレーダー照射の周波数の情報を公開するよう日本側に求めているが、防衛省幹部は「周波数データはP1の監視能力の手の内をさらすことになる。電子戦能力でもあり機密だ」と述べた。

◇監視ターゲットは2隻 
「2隻ともに1000ヤード(約900メートル)間隔」。映像は機長へのこの報告から始まる。撮影日と場所は20日午後3時ごろの能登半島沖の日本海。天候は晴れ。波の高さは1メートル程度で比較的穏やかな海面だった。視程も20キロと見通し良く、厚木航空基地(神奈川県)から飛来したP1のクルーの眼下には日本のEEZ内で活動する韓国警備救難艦と韓国駆逐艦がいた。EEZ内で何をしているのか。監視は2隻の艦番号の確認から始まった。
まず韓国警備救難艦に近づき撮影。救難艦の左前方に北朝鮮籍とみられる漁船。それをはさむように救難艦の搭載ゴムボート2隻が見える。P1が警備救難艦を通過し、駆逐艦に向かう直後に艦船までの一定の距離の接近を知らせるけたたましい音が機内に響く。
P1は一定の距離を保ちゆっくりと駆逐艦の艦尾を通過。艦尾の甲板にヘリコプターを搭載していないか確認した。「特異事象等なし」とクルーが報告した。

◇高度上げ撮影中、状況一変
P1はさらに駆逐艦を撮影するために旋回して回り込み後方から接近。駆逐艦からの無線による呼び掛けにも備えた。艦船への接近を知らせる音が再び鳴る。右舷真横を飛行し、船首に書かれた艦番号「971」を確認。全景をカメラに収めるために飛行高度を上昇させ、駆逐艦から約5000メートル離れて撮影中に状況が一変した。
「あー出しています」「FC(火器管制レーダー)系出している」。映像が始まって約6分後、クルーが火器管制レーダーの照射を探知した瞬間の声が流れる。やや早口になった口調からも緊張感が伝わる。「避けたほうが良いですね」「砲の指向等(向き)を確認する」と進言と報告が飛び交う。危険回避のために機長の「いったん離隔する(離れる)」の声も記録されている。
映像には、レーダー照射の電波が強く、「めちゃくちゃすごい音だ」「この音、覚えておいてください」、「砲はこちら向いていない」などのやりとりもあるが、いずれも緊張感の中にも落ち着きが感じられ、高い練度がうかがえる。
機長が「一応呼び掛けようか」と韓国駆逐艦への無線による交信を指示。英語で「韓国海軍艦艇 艦番号971」「こちらは日本国海上自衛隊 貴艦のFCアンテナがわれわれを指向したことを確認した」「貴船の行動目的は何ですか」と繰り返したが応答はなかった。

◇決定的証拠は機密
公表されていない海自側の決定的な証拠は、駆逐艦の火器管制レーダーの電波(周波数)を記録したデータだ。防衛省幹部は「どの程度、正確に電磁波(周波数)を受信できるかはP1の能力に関わることで、公表できない」と話す。相手のレーダーの周波数を正確に把握すれば、電波妨害などの電子戦にも使用できるため、自衛隊内でも収集したデータは機密扱いになっている。
海自幹部は「韓国側が最初に謝罪していれば早々に幕引きしていた。韓国側が、回答できないレーダーの情報を求めるのは想定内。不可解な説明を積み重ね、引くに引けない状況なのだろう」と指摘した。

◇P1哨戒機
P1哨戒機 海上自衛隊の哨戒機。P3Cの後継機で、海面に投下したソノブイによる潜水艦の探知・追尾や、赤外線センサーによる洋上の目標の探知能力がある。国産で全長38メートル、乗員11人。日本周辺海域の警戒監視や北朝鮮の競取り監視にも投入されている。

◇火器管制レーダー
火器管制レーダー 攻撃目標の方位、距離、高度などを測定する水上艦などに搭載されているレーダー。目標を最終的に絞り込むもので、広範囲を照射する水上捜索レーダーとは異なり、ピンポイントで照射する。得られたデータはミサイルや火砲の発射装置に送信される。照射を受けた側はセンサーで電波の周波数などを受信し、認識することが可能(時事通信社編集委員 時事総研 不動尚史)。

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