大阪強殺、2人死刑執行 山下法相初 年15人、公表後最多並ぶ - 東京新聞(2018年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122702000256.html
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法務省は二十七日、一九八八年に大阪市投資顧問会社「コスモ・リサーチ」の社長ら二人を殺害し、一億円を奪ったとして強盗殺人罪などに問われた元暴力団幹部岡本(旧姓河村)啓三(60)、元投資顧問業末森博也(67)の両死刑囚=いずれも大阪拘置所=の刑を同日午前に執行したと発表した。十月に就任した山下貴司法相が執行を命じたのは初めて。岡本死刑囚は再審請求中だった。
死刑執行は、オウム真理教元代表麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=ら七人が七月六日に、残る幹部六人が同二十六日に執行されて以来となる。今年の執行人数は十五人で、法務省が執行の公表を始めた九八年以降、最多だった二〇〇八年に並んだ。
これで第二次安倍政権での執行は計三十六人。刑事施設に収容されている確定死刑囚は百九人になった。
山下法相は二十七日の臨時記者会見で、「誠に身勝手な理由から被害者の尊い命を奪った極めて残忍な事案。法の峻厳(しゅんげん)さと正面から向き合い、慎重な上にも慎重な検討を加えて刑の執行を命じた」と述べた。執行命令書には二十五日に署名したという。
確定判決などによると、岡本、末森両死刑囚は八八年一月、コスモ・リサーチ社員の渡辺裕之さん=当時(23)=に、大物相場師として知られた社長の見学和雄さん=同(43)=の自宅まで案内させ、見学さんを拉致して脅した上、一億円を奪って二人を殺害。遺体をコンクリートに詰めて、京都府内の山林に埋めた。
一審大阪地裁は九五年三月、求刑通り死刑判決を言い渡し、二審大阪高裁も支持。最高裁は上告を棄却し、二〇〇四年に死刑が確定した。

◆岡本死刑囚の弁護士「再審請求中になぜ急いだか」
岡本啓三死刑囚の弁護人だった池田直樹弁護士によると、岡本死刑囚は昨年一月、「計画的な犯行ではなかった。強盗した後に殺意が芽生えており、強盗殺人罪には当たらない」として再審請求をしていた。
池田弁護士は本紙の取材に「裁判所の判断を待つ中で、どうして急いで執行する必要があるのか理解できない。死刑判決は不当だと主張し続けてきたので、残念でならない」と話した。

<死刑を巡る議論> 最高裁はこれまでの判決で、死刑制度が憲法36条の禁じる「残虐な刑罰」に当たらないと判断している。旧民主党政権の2010年、当時の千葉景子法相は死刑を執行する一方、東京拘置所の刑場を公開。法務省内に死刑制度の在り方を検討する原則非公開の勉強会が設けられたが、12年に存廃両論を併記した報告書をまとめて終結した。内閣府が14年に実施した世論調査では、制度容認が80・3%で、廃止を求めたのは9・7%だった。