(政界地獄耳)皇族の考えも退けた政府 - 日刊スポーツ(2018年12月27日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812270000165.html
http://archive.today/2018.12.27-014209/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812270000165.html

近現代史研究者・辻田真佐憲の指摘によれば16年10月から14回にわたって「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が開かれたが、その中で保守系有識者の1人が「天皇は祈っているだけでよい」との趣旨の発言をしたという。伝え聞いた天皇陛下は「ヒアリングで批判をされたことがショックだった」(毎日新聞17年5月21日付)と、お心を吐露している。象徴としての「公務」を否定されたからだ。また同会議が譲位は一代限りの特別措置を前提に進められたことに対しても「一代限りでは自分のわがままと思われるのでよくない。制度化でなければならない」「自分の意志が曲げられるとは思っていなかった」(同紙)とも。

★皇族の考えや発言はこれほどまでに、ほごにされるものなのか。秋篠宮さまは先月30日の会見で皇室行事の大嘗祭(だいじょうさい)について触れ「宗教色が強いものについて国費で賄うことが適当かどうかという時に私はやはり内廷会計で行うべきと思っている。宮内庁長官などにはかなり言っているが話を聞く耳を持たなかった」と発言した。そのプランとは収穫に感謝する毎年の新嘗(にいなめ)祭が行われている、国中の神々をまつる神殿である神嘉殿のことで「大嘗宮を建てず、宮中にある神嘉殿で執り行っても儀式の心が薄れることはないだろう」と提案したものの、先の代替わりの時に議論は尽くされたとして取り合わなかった。

★21日、宮内庁は「大嘗祭」の費用が27億1900万円と、前回より4億7000万円増加すると発表した。皇居・東御苑に新造される大嘗宮の設営費関連だけで19億700万円かかる。国民の中にいたいと考える皇族に対して、政府は「公務より皇居で祈っていろ。節約などの口を出すな」ということだ。政府は国民同様、皇族の考えも退けた。(K)※敬称略