(政界地獄耳)政権とメディアの独立性 - 日刊スポーツ(2018年12月25日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812250000189.html
http://archive.today/2018.12.25-011505/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812250000189.html

★この1年、メディア独立性は保たれたのか。政権への忖度(そんたく)に拍車がかかったと感じる読者も多いことだろう。「共犯者たち」という韓国のドキュメンタリーが話題だ。約9年間にわたる李明博朴槿恵政権の言論弾圧の実態を告発している。政権は国民の支持率を上げるため公共放送局KBSや公営放送局MBCに露骨な介入を開始。政権に批判的な経営陣は排除され政権に近い政治部系の幹部らが経営権を持つ。両局の労働組合ストライキで対抗するが検察に逮捕され解雇されていく。監督は12年にMBCを不当解雇された記者・チェ・スンホ。韓国のテレビ報道を骨抜きにした「主犯」とそれらに迎合した「共犯者たち」を追うものだ。

★日本でも政治部はともかく社会部には気骨ある記者がいる。「自衛隊の闇組織 秘密部隊『別班』の正体」(講談社現代新書)の著者は共同通信編集委員・石井暁。歴代首相や防衛相も知らない防衛省内の秘密情報組織「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」とは何か。シビリアンコントロールに抵触しないのか、陸軍中野学校の流れを引く小平学校の心理戦防護課程を経て海外にまで拠点を置いていたのではないかと石井は取材を続ける。その動機は特定秘密保護法により都合の悪いことは秘密にできるという仕組みの危険さがあると石井は問うている。

★検察は不起訴にしたものの、まだ謎の多い森友事件はもう終わったことなのか。元NHK大阪放送局司法キャップ・相沢冬樹が記者としての戦いをつづった「安倍官邸vsNHK」(文芸春秋)も読み応えある。相沢は他社との報道合戦よりも社内との闘いに苦悩する。東京の報道局長が政権に忖度してか報道させない、また特ダネも大阪だけの放送や骨抜きの原稿に書き直させられるなどが克明に記される。NHKは早速会見で「主要な部分において虚偽の記述が随所に見られるなど極めて遺憾」「報道局長の意向で報道内容を恣意(しい)的に歪(ゆが)めた事実はない」などと反応している。いずれも原稿にできなかった部分を書籍にして補完している。マスゴミかどうか、是非一読して判断して頂きたい。(K)※敬称略

安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由

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