沖縄県民投票 等しく参加の機会を - 朝日新聞(2018年12月24日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13825274.html
http://archive.today/2018.12.24-023350/https://www.asahi.com/articles/DA3S13825274.html

来年2月に行われる沖縄県民投票の行く手に暗雲が垂れ込めている。県内41市町村のうち、これまでに8市町の議会が投開票事務の経費を計上した予算案を否決または削除したのだ。
最終的には各首長の判断にゆだねられるが、このままでは住んでいる場所によって、投票権を行使できる人とできない人とが生まれることになる。
それはおかしい。参加の道は等しく開かれるべきだ。
投票は、米軍基地建設のために辺野古の海を埋め立てることについての賛否を問うものだ。沖縄の明確な意思を示そうと市民団体が9万人を超す署名を集めて請求し、10月の県議会で関連条例が制定された。
県政では野党の立場の自民と公明は、賛成、反対に加えて、「やむを得ない」「どちらとも言えない」の選択肢も設けるよう主張した。だが、市民団体が請求した趣旨を尊重する与党と調整がつかなかった。対立は尾を引き、いまも「賛否だけでは多様な意見をすくい上げられない」などの声があがる。
だからといって投票自体を否定する動きには賛成できない。
選挙によって選ばれた首長と議会が自治の車の両輪だ。そしてそれを補い、地方政治の重要事項に住民の意思を直接反映させるために、県民投票などの仕組みが用意されている。この基本を忘れてはならない。辺野古問題が、過重な基地負担に苦しんできた沖縄が直面する極めて重要なテーマであることは、改めて言うまでもない。
予算案を認めなかった8市町は、普天間飛行場のある宜野湾市をはじめ、保守系の首長や議員が多い。県民投票を支持・推進してきた玉城デニー知事に対抗し、投票の正統性に疑義を突きつけようという政治的思惑も背景に透けて見える。
しかし8市町からも、あわせて約3万の人々が直接請求に名を連ねている。地域の責任ある政治家ならば、この重みを受け止めるべきだ。そのうえで、埋め立てに対する自身の考えを理由とともにしっかり説明して、大いに議論すればよい。
県も、自治体側の理解が得られるように、投票の意義を重ねて丁寧に説く必要がある。
それにしても、なぜこのような形で沖縄県民同士が角突きあわせなければならないのか。9月の県知事選をはじめ、繰り返し示されてきた「辺野古ノー」の民意を踏みにじり、基地建設を強行する政権が、この分断・対立をもたらしている元凶であるのは明らかだ。
その罪は、いよいよ深い。