ゴーン前会長再逮捕 保釈阻止へ「前倒し」 識者ら「強引」な手法批判 - 東京新聞(2018年12月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018122202000118.html
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保釈の可能性が浮上した直後の逮捕劇は、再び世界に衝撃を与えた。日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)への勾留延長請求の却下から一夜明けた二十一日、東京地検特捜部は、三度目の逮捕に踏み切った。識者からは検察の強引にも見える手法に批判の声が上がる。 
特捜部が今回問うのは、会社に損害を与えたとする会社法の特別背任。なぜこのタイミングで会社を私物化したとされる事件の「本丸」に着手したのか。
「捜査の中身に関わるため差し控える」。特捜部幹部は逮捕容疑を発表した席上、なぜ逮捕がこの日になったのか報道陣に問われたが、明確に答えなかった。
だが、ある検察幹部は保釈の可能性が高まっていたこととの関連性を否定しない。「保釈されれば、任意の取り調べに応じるわけがない。海外に渡航される恐れもある。そうなれば、事件着手は絶望的だ。前倒しせざるを得なかった」
ゴーン容疑者が有価証券報告書の虚偽記載容疑で二度目に逮捕されたのは今月十日。特捜部は勾留期限の二十日、勾留の延長が東京地裁に認められることを前提に、三十日まで取り調べ、年明けに特別背任で再逮捕する青写真を描いた。
ところが、地裁は延長請求を却下。保釈の可能性が高まった。ゴーン容疑者の弁護人は、保釈後の任意の取り調べには応じない姿勢を見せている。「動くしかない」(別の検察幹部)状況になった。
ある幹部は「虚偽記載事件と並行して(特別背任事件の)準備は進めていた」とするが、別の幹部が「虚偽記載事件の捜査にもっと時間を使いたかった。でも打つ手を失ってからでは遅い。何とかする必要があった」と明かす。唐突な逮捕だったことは否めない。
ゴーン容疑者について会社の私物化疑惑が次々浮上したが、二度の逮捕容疑は書類にうそを書いた罪。「形式的な犯罪でしかない」との批判も上がっていた。
検察幹部の一人は「企業統治の罪を問う意味で、特別背任よりも重い」と力を込めるが、別の幹部は「特別背任は経済事件の柱。経営者が会社に損害を与えたことを立件する意味は大きい」と意義を語る。ある幹部はこう強調した。「予定より早まったが、生煮えではない。私物化の実態を明らかにしていく」 (小野沢健太、山田雄之)