目黒女児虐待死事件 「かわいそう」で終わらせないで:東京 - 東京新聞(2018年12月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201812/CK2018122102000124.html
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児童養護施設などを退所した若者のアフターケア相談所「ゆずりは」(国分寺市)の高橋亜美所長(45)が今月、三月に発覚した目黒の女児虐待死事件への思いをつづった詩集絵本「はじまりのことば」を、墨田区の出版社「百年書房」のすーべにあ文庫から著した。六月に公表され、数多く報じられた五歳の女児が「もうおねがい ゆるして」などと書いたノートは本人の意思によるものではないとの持論を示し、「かわいそう」で終わらせてはいけないと訴えている。 (井上幸一)
収録された詩では、「5歳の少女が/ひらがなだけの文章を書いて/生きたいと願っていた― 本当だろうか?」と疑問を呈し、(中略)「言われるがまま/覚えたてのひらがなを/使って書かされた/ぬけがら」とつづった。
高橋さんは、あのノートを女児の「心の叫び」とし、「かわいそう」とあおる風潮が虐待の根にある問題を見えづらくすると指摘。虐待している親の回復プログラムを実践してきた経験などから、「子どもを助けるためには、まず親を」と主張し、気持ちがほどけるような「(親や子どもらへの)はじまりのことば」こそが必要とする。
一方で、今回の著書には、少女のノートの文章も収録した。「全ての感情が奪われた抜け殻のような文字から、虐待が命の前に、子どもの魂を奪っていると感じた。すごく心を動かす一方、あそこには心も何もなかった。だから、そういうものとして残すことに意味があると考えた」という。「あのとき流した涙を、一人一人の胸の内に持ち続けてほしい」と呼びかける。

刊行に当たっては、「百年書房」の藤田昌平代表(49)が女児のノートをすぐに文庫化したいと、高橋さんに相談。高橋さんは「児童虐待は、私たちにとって日常にある問題。目黒の事件が特別ではない」と、当初あまり積極的ではなかったという。その後、ノートが誤解、誤読されたまま事件が風化しているとの高橋さんの見解を聞き、「あの時に何を思ったかを残すために、やはり本にまとめることになった」と藤田さんは説明する。
児童養護施設で関わった少年少女の声を代弁してつづった「はじめてはいたくつした」「嘘(うそ)つき」(ともに百年書房刊)に続き、高橋さんの虐待に関する詩集絵本は三冊目。来年以降、これらの本を携えて、朗読や講演などで全国行脚する予定もあるという。
「はじまりのことば」は五百円(税別)。問い合わせは、百年書房=電03(6666)9594=へ。