(大弦小弦)辺野古に「ひさ坊」の愛称で親しまれたウミンチュがいた… - 沖縄タイムス(2018年12月18日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/360821
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辺野古に「ひさ坊」の愛称で親しまれたウミンチュがいた。本名は島袋利久さん。丸刈り頭で眉は太く、タンクトップ姿の小さな体は真っ黒。ニカッと笑うと何とも言えない愛嬌(あいきょう)があった

海上ヘリ基地計画が浮上した1996年から水中撮影のため、安価で船を出してもらった。漁港で待ち合わすといつも遅れ、姿を現せばほろ酔い状態。船代とは別に「200円」があいさつ代わりで、渡すと缶ビールを買いにまた姿を消した

▼海に出ればそこはひさ坊の庭。サンゴがどこにあるかを熟知していた。撮影後、「この海すごい」と言うと誇らしげにニカッ。建設の賛否など尋ねなかったが、くしゃくしゃの笑顔が全てを物語っていた

▼ひさ坊が55歳で亡くなってから10年。政府は14日、ついに土砂投入を強行した。ひさ坊の顔がなぜか浮かんだ

▼この22年、なぜ海兵隊が沖縄に必要か、なぜ辺野古が唯一かの丁寧な説明を政府から受けたことはない。「普天間飛行場の危険性の除去」を唱えながら、所属機の傍若無人な運用に歯止めをかけるそぶりすらない

菅義偉官房長官は「全力で埋め立てる」と宣言し、岩屋毅防衛相は拒否する県民を疎外するかのように「日本国民のためだ」と言った。全国の人々はどうか辺野古に目を向けてほしい。ひさ坊ら先人が愛し、県民が全力で守りたい海があるのだ。(磯野直)