優生手術救済 検証と謝罪が問われる - 朝日新聞(2018年12月14日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13810814.html
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まだ課題が山積みだ。救済制度のあり方だけでなく、過去の検証と謝罪が問われている。
優生保護法のもと、障害のある人たちが不妊手術を強いられた問題で、与党のワーキングチーム(WT)と超党派議員連盟が救済法案に関する基本方針をまとめた。
被害者の請求に基づき、一律の一時金を支給する。制度を周知するため、障害者手帳の更新時に案内したり、医療機関福祉施設から申請を呼びかけてもらったりすることが示された。
個別の通知は見送られた。手術について周りに知られたくない人もいて、郵便などで知らせると混乱しかねないという。
プライバシーへの配慮は重要だ。だが、障害のため被害を自覚しておらず、事情を知る親は他界した人も少なくない。
いまの案では十分な救済を期待できない。知的障害者の団体は、守秘義務がある公務員が直接伝えることを提言するという。残された記録では氏名や連絡先もわからないケースの追跡調査とともに、幅広い救済につながるよう、関係者でさらに知恵を絞ってほしい。
被害者からの請求は、厚生労働省に置く認定審査会が審査する。医学や法律、障害者福祉の専門家がメンバーとして想定されているが、問題を長年放置してきた厚労省に認定を求める形となるだけに、被害者側は反発している。納得を得られる仕組みが必要ではないか。
救済法案では前文で、被害者が受けた心身の多大な苦痛に触れつつ「我々は、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」とうたうことになった。
「我々」とは誰なのか。与党WT座長の田村憲久衆院議員(自民)は「政府と国会が含まれる。広くは地方自治体、優生思想という風潮があったことからすると社会も含まれるかもしれない」と説明する。旧優生保護法議員立法で成立し、政府の方針に従って自治体が競うように手術を推進した経緯を踏まえた発言だろう。
人権を踏みにじる政策がなぜ立案され、歯止めがかからないまま2万5千人もの人に優生手術が行われてしまったのか。その過程と責任の所在を明らかにする検証作業が欠かせない。
基本方針は「調査のあり方について法案の国会への提出までに検討する」と触れただけだ。過ちを二度と繰り返さないためにも、早急に検証態勢を整えるべきだ。
被害者側は国による謝罪を求めている。その思いにこたえなければならない。