(私説・論説室から)増税恐怖症 - 東京新聞(2018年12月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018121202000182.html
http://web.archive.org/web/20181212064645/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018121202000182.html

10%への消費税増税を控え、政府はさまざまな軽減対策を打ち出している。次から次とよく考えつくものである。
なにしろ増税を言い出せば選挙に負けること請け合いだし、政権も倒れかねない。必死である。この点は野党も変わらない。
税は再分配するものだ。どこに使われるのか、にもっと関心が集まっていい。
消費税増税分は法律に年金、医療、介護、少子化対策に使うことが明記されている。事実上の目的税だ。
税率10%になると低年金者約八百万人に最大月五千円の給付制度が始まる。低所得高齢者の介護保険料の軽減も実施される。
これまでの引き上げで既に基礎年金額のうち、税金で賄う分が三分の一から二分の一になった。これも増税による充実といえる。「社会保障と税の一体改革」の成果である。
増税は敬遠したいから目がいきがちだが、負担を受け入れるにはそれに見合う給付かをセットで考える必要がある。
国民が高い税を理解しているスウェーデンは情報公開を進め、どんな負担ならどんな給付があるかを明確にしている。だが、かの国を参考にできない。それを可能にしているのは政府が国民から信頼されているからだ。
モリカケ問題を挙げるまでもなく、わが国政府の信頼度は低い。かくして政府の増税恐怖症はなくならない。 (鈴木 穣)