(政界地獄耳)ブッシュの死と政治の貧困 - 日刊スポーツ(2018年12月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812030000150.html
http://archive.today/2018.12.03-013827/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201812030000150.html

★米国第41代大統領ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュが94歳の生涯を閉じた。第2次大戦ではパイロットとして活躍。テキサス州選出の下院議員を務めたあと、国連大使や中国公使、CIA長官などを務めたのちレーガン政権の副大統領を務めた。共和党の予備選では元上院院内総務のボブ・ドール、息子のブッシュ政権で国防長官に就任したドナルド・ラムズフェルドに勝利し、88年の大統領選挙では民主党マサチューセッツ州知事だったマイケル・デュカキスを破り当選した。

★ブッシュの最大の功績は冷戦終結宣言だろう。89年、12月、マルタ会談でソビエト連邦ゴルバチョフ共産党書記長と会談し、冷戦の終結を宣言した。1991年1月17日の多国籍軍によるイラク空爆により、湾岸戦争が始まる。対日政策では日米構造協議でコメや牛肉などの自由化を強く求め、自動車には輸出規制を取るなど歴代共和党政権としては厳しい対応だったが、当時の日本はバブル期ともいえた。

★時の政権は海部内閣。湾岸戦争での多国籍軍参加を強く促されたものの、結果90億ドル(当時の日本円で約1兆2000億円)を拠出したが、国際的評価は得られなかった。戦後、PKO協力法によりペルシャ湾の機雷除去を目的として海上自衛隊の掃海艇派遣を実現させたことを考えると、ブッシュ政権時にやりえなかったことを日本は既にクリアしてしまっている。ブッシュは1期でビル・クリントンに政権を明け渡したが、当時の政治や政治家がしっかりしていたことが分かる。まだ、世代的にも先の大戦の経験者が多く、今の政治のレベルからみれば極めて上質な政治が展開されていたのではないか。また世界の国民が平和を希求する目標が明確にあった時代だった。ブッシュの死とともに政治の世界的貧困を憂う。(K)※敬称略