(大弦小弦)言論の自由とは何か… - 沖縄タイムス(2018年12月3日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/353385
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言論の自由とは何か、と聞かれたら、迷わずあの有名な一節を引く。「あなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命を懸けて守る」。残念ながら、今回はこう言わないといけない。「賛成だ。だがあなたがそれを主張するのは好ましくない」

秋篠宮さまが新天皇即位に伴う行事「大嘗祭(だいじょうさい)」について、「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当か」「憲法との関係は」と疑問を呈した。神道の行事で、確かに政教分離の原則に反する恐れが強い

▼趣旨には賛同するが、皇族が政治に影響を与えることもまた、避けなければならない。どちらも、国家神道や皇室が戦争を導いた反省から生まれた憲法の原則である

▼2年前の天皇陛下の退位メッセージも今回も、明らかに政治的な力がある。それなのに護憲派が発言を擁護し、政権批判に利用することに疑問を感じる

▼原則を都合よく使い分けるのは危ない。皇室制度をどうするかは、皇室に寄り掛からず、国民が責任を持って結論を出す必要がある。原則通りだとそうなる。同時に、当事者の意見が反映されない仕組みには心が痛む

▼国民多数が支持しているという理由で、少数の皇族の人権を奪うことは正当化できるのか。段階的にでも、個人を解放すべきではないか。考えるほどに、制度の非人道性が浮かび上がる。(阿部岳)