就労外国人 肝は省令任せ 立法府軽んじる法案形式 - 毎日新聞(2018年11月27日)

https://mainichi.jp/articles/20181127/ddm/005/070/063000c
http://archive.today/2018.11.27-001035/https://mainichi.jp/articles/20181127/ddm/005/070/063000c

外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案では「省令で定める」との規定が30カ所以上に及ぶ。
新設される在留資格の要件については、特定技能1号は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」、2号は「熟練した技能」とおおざっぱに規定してあるだけだ。
1号の在留期間は最大5年とし、2号は長期更新が可能と政府は説明しているが、法案に規定はない。
どのような産業分野を人手不足と判断し、どのような技能を持った外国人労働者を受け入れるのか。その判断や運用の「基本方針」は後から閣議決定するとされている。
閣議決定は内閣、省令は各省の判断で出せるが、その具体的な内容は国会で成立した法律の範囲内で政府に委ねられる。しかし、今回の法案は肝になる部分が省令任せで、政府にフリーハンドを与えるに等しい。
こんな法案の形式で国会審議を求めるのは、例えるならレストランが客にメニューを見せずに注文を決めろというようなものではないか。
就労できる業種や人数などを細かく法律に書けば運用が硬直的になるとの理屈もあるのだろう。ただ、できるだけ国会に縛られたくないという政府側の本音もちらつく。
政府は5年間で14業種約34万人という受け入れ見込み人数を示した。法案に上限規定はないものの、これを上限として運用すると安倍晋三首相がいったん国会で答弁した。
ところが政府は、法律の成立後につくる産業分野別の運用方針で受け入れ人数を示すと首相答弁を修正した。それだけ恣意(しい)的に行政運用が揺れ動く証左といえよう。
これまでの国会審議では外国人労働者の待遇や生活環境の整備も重要な論点となっている。その基準も省令で定めるというのでは、政府の裁量範囲が広すぎる。
昨年施行された技能実習適正化法には実習生の賃金を日本人と同等以上にする規定があるが、入管法改正案にはそれも明記されていない。
省令委任が多いなら、なおさら国会で運用内容を詰めるべきだ。政府が「省令で定める」との答弁を繰り返す限り議論は深まらない。
委員会審議に先週入ったばかりでもう採決するというのであれば、立法府をあまりにも軽んじている。