経済衰退にトドメか?「大阪万博2025」は悪夢でしかない(山田順) - Y!ニュース(2018年11月25日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20181125-00105370/

たまたま、アメリカに来ていて、こちらで「大阪万博」決定のニュースを知って、本当に情けなくなった。なぜ、いまさら、日本で「万博」(国際博覧会国際博覧会条約に基づき、博覧会国際事務局(BIE)が認定する博覧会=EXPO)をやる必要があるのだろうか?
いまや、国を挙げて行うような万博(EXPO)は、発展途上国や権力をアピールしたい強権国家以外は興味を示さない。なぜなら、ネットが進展し、情報も技術も瞬時で共有できる世の中になったのに、わざわざ「展示パビリオン」をつくって観客を集める万博を行う意義がなくなったからだ。もはや、万博はその使命を終え、「オワコン」も同然である。
それに、たとえば、国際家電見本市 (CES、ラスベガス)、国際モーターショー(世界規模の自動車見本市、デトロイト、フランクフルトなどで開催)、ハノーヴァーメッセ(オートメーションなど世界最大の産業見本市)、SLUSH(IT関連のスタートアップのイベント、ヘルシンキ)、モバイル・ワールド・コングレス(世界最大規模のモバイル関連見本市、バルセロナ)など、万博以上に注目を集め、未来を示してくれるイベントは、毎年、世界中で開催されている。
さらに、今回、大阪と開催を争ったのは、ロシアのエカテリンブルクアゼルバイジャンのバクーという、たったの2都市。エカテリンブルクプーチン大統領が世界に発展を誇示したい工業都市。バクーは石油で儲かったカネで、独裁者アリエフ大統領が金ピカを自慢したい首都。どちらも、「金欠」の大阪が争うべき相手ではなかった。
しかも、当初は立候補を表明していた本命のフランス(パリ)は、早々と辞退していた。その理由は、「フランスの納税者がリスクを負わないという保証がない」というのだから、もっともである。
つまり、単なる「タナボタ」にすぎないのに、なぜ、こうもはしゃぐのだろうか?
多くの日本の報道では、「官民一体の努力が実った」と、招致成功は美談になっている。しかし、本当は、『朝日新聞』などの一部メディアが伝えるように、一致団結した「集票工作」の結果だった。
BIEは170カ国が参加する組織だが、そこでの大票田はアフリカや中東、欧州の小国家。これらの国の票を集めるために、経済援助や日系企業の現地での雇用などの「エサ」を用意し、官民挙げて招致活動を行ってきたのだ。
その結果が、決選投票での日本92票、ロシア61票という結果だった。本当に情けない。
残念だが、大阪万博決定のニュースはアメリカではまったくと言っていいほど、報道されなかった。
テレビでは『ABC News』が《Japan's Osaka will host the World Expo in 2025, beating out Russia, Azerbaijan for an event that attracts millions.》と、ほんの短く伝えただけ。万博というイベントが「資金を引っ張る」と認識されていることが、日本の情けなさを象徴している。

さらに、パリ発のAP電は次のように、ベタ記事で伝えた。

《PARIS (AP) The Japanese city of Osaka will host the World Expo in 2025, after beating out cities in Russia and Azerbaijan in the race to host an event expected to draw millions of visitors and showcase the local economy and culture. Shouts of joy in Japanese erupted in the Paris auditorium when the 170 member states of the Bureau International des Expositions voted Friday in favor of Osaka's bid. Dark-suited officials hugged and jumped up and down, and Japan's economy and trade minister, Hiroshige Seko, said he felt "Excellent! I'm excited! I also feel a heavy responsibility to make Expo 2025 successful."》

投票で大阪に決まったとき、「日本人たちは喜びの歓声を上げた」と書かれ、さらに「ダークスーツ姿の官僚たちが抱き合いながら飛び跳ねた」などと続けられると、完全にバカにされているのがわかり、哀しくなってくる。
松井一郎大阪府知事らが肩を抱き合い握手する姿や、「心の底からうれしい」と記者会見で語った世耕弘成経済産業相の上気した表情どれも見るに耐えなかった。なぜ、もっと「大人の対応」ができなかったのだろうか?
日本国はいまも“経済発展病”という重篤な病にかかっていて、なにかと言うと「経済効果」が叫ばれる。それは、大阪府の試算では2兆3000億円。万博に合わせたイベント開催や観光客の増大などの間接的な誘発効果は大阪府の試算では4兆1000億円。まとめて6兆4000億円の経済波及効果が見込めるという。

しかし、こんな「皮算用」が一概に信じられるだろうか?

この経済効果のために、会場建設費に約1250億円がつぎ込まれ、さらに会場となる夢洲へのアクセスで、夢舞大橋の整備と大阪メトロの伸長工事などで約540億円がかかるとされている。
しかし、これらはあくまでも「試算」だから、東京オリンピックの例を持ち出すまでもなく、今後次第でどうなるかはわからない。結局、予算はどんどん膨らみ、最終的に税金が投入されるだろう。これは、私たち国民にとって「悪夢」だ。
哀しいことに、大阪万博は世界150カ国の参加を見込み、2025年5月3日〜11月3日の185日間開催され、その間に、国内外から約2800万人の来場が見込まれている。中国人観光客ですら、すでに大阪には1度はやって来ている。万博があるからといって、彼らは再び大阪に来るだろうか? まして、欧米の観光客が、この極東の島国までやって来るだろうか?
現在、東京オリンピック開催まで2年を切り、会場整備などの準備が進んでいるが、そのなかでもっとも懸念されているのが「ボランティア」である。
なんと、組織員会と東京都を合わせて11万人が募集され、現在、登録者が8万人を突破したと伝えられている。しかし、これは登録だけの話で、実際に登録者が本当にボランティアをするかどうかはわからない。
なぜなら、ボランティア募集には批判が多く、とくに「無償」であることで、「体のいい奴隷労働」(タダ働き)などと言われてきたからだ。滞在費も交通費も出ないというのだから、このような批判は当然だろう。こうしたことが、大阪万博でも行われる可能性は十分にある。
東京オリンピックは灼熱の真夏で行われること、見込まれた当初予算では実行できなくなったことなどから、成功が危ぶまれている。さらに、オリンピック後は、反動不況が来ることが確実視されている。
少子高齢化と人口減で、縮小していく日本経済。その衰退に、大阪万博がトドメを刺すかもしれない。