(政界地獄耳)障がい者雇用問題 中央と地方の温度差 - 日刊スポーツ(2018年11月26日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811260000121.html
http://archive.today/2018.11.26-015042/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811260000121.html

★中央省庁の33行政機関のうち8割に及ぶ27機関で、雇用している障がい者の人数を40年以上にわたって水増ししていたことが分かった。つまり我が国の障がい者政策など、事実上なかったといっても過言ではない。建前だけの偽善的政策だった。加えて、厚労省もその水増しに関わっていたことまでも発覚。救いようのない障がい者差別大国といえる。この政策の趣旨は、障がい者が雇用のチャンスを奪われないようにするための重要な政策であり、健常者と障がい者が役割分担しながら働き方を模索し、雇用を確保する政策だ。

★法定雇用率は、国や地方の行政機関の方が一般企業より高めに設定されている。法律の制度設計時には、高い意識を持つべきという啓蒙(けいもう)も含まれていただろう。行政が企業に課している水準すら満たしていなかったという、救いようのない体たらくを露呈させた。発覚後、当時の厚労相加藤勝信は「こうした事態になったことは誠に遺憾であります。深くおわび申し上げます」と陳謝したが、その加藤は内閣改造自民党三役に収まった。まともな神経なら謹慎したいと申し出るレベルの恥ずかしさだが、ご本人は「俺のせいではない」という気持ちなのだろうか。

★この問題では、中央官庁は大臣に陳謝させて幕引きとなったが、地方自治体の一部は、水増しが判明した38県のうち三重、愛媛、茨城、高知、長崎の5県が職員らの処分を決めている。また山形、千葉の2県は処分する方向で検討しているという。この現実を見ると、霞が関の政策がいかに机上の空論であるかが分かる。知事の方が、県民との距離の近さも感じる。そして何より、責任の所在を明確にして障がい者やその関係者にわび、2度と繰り返さないという不退転の決意を感じる。(K)※敬称略