<税を追う>中期防兵器リスト 「八掛け」で詰め込む - 東京新聞(2018年11月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112302000127.html
https://megalodon.jp/2018-1123-0945-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112302000127.html


「機動戦闘車、九十九両」
「ティルト・ローター機(輸送機オスプレイ)、十七機」
「戦車、四十四両」……

二〇一三年十二月に閣議決定した現行の中期防衛力整備計画(中期防)。一四〜一八年度の防衛費の総額を二十三兆九千七百億円程度と定め、購入する兵器の名前がずらりと記してある。中期防は五年ごとに策定される、いわば兵器の「買い物リスト」だ。
各兵器の防衛省の見積額は、企業との取引に影響があるとして非公表だが、財務省が実際の購入額と比較すると、見積もりのずさんさが浮かび上がった。
機動戦闘車は一両四・八億円の見積もりに対し、購入額は七・一億円(48%増)。オスプレイは一機六〇・五億円→七四・六億円(23%増)、戦車は一両十億円→一一・五億円(15%増)など、二十二品目のうち十五品目で見積もりより高騰していた。
価格が高騰すれば数量を減らす必要が出てくる。国産の機動戦闘車は十二両、戦車は四両減らした。C2輸送機(一機二〇六・四億円)も当初の十機から七機に。計九品目で目標を達成できないという、ちぐはぐな結果だ。一方、オスプレイは計画通り十七機を米国から輸入する。その分、他の兵器を減らした格好だ。
「こんなに購入単価が上がってしまっては(購入する)数量が達成できないのは当たり前だ。コスト管理ができていない」。財務省幹部は指摘した。なぜ取得価格は上がったのか。
防衛省の末永広防衛計画課長は「消費税率が5%から8%に上がり、装備品によっては加工費や材料費も上がった」と説明。為替レートが円安になり、米国から兵器を調達するコストが増えたことも原因に挙げたが、財務省は為替の影響額を除いて計算しているので理由にならない。
現場からは、別の声が聞こえる。「『ポツハチ』を掛けたりするんだよ」。十年ほど前に退官した元自衛隊幹部が明かした。ポツハチとは「見積もりを0・8倍する」という意味だ。
「中期防のリストに(兵器の)アイテムが載っていないと、絶対に事業化されない。だから、見積額を八掛けにして無理やり入れている、というのが実態だ」
このため調達の際には当然価格が上がり、逆に数量が減る事態が起きる。会計部署を経験したことがある現役自衛官の一人は「中期防に詰め込むだけ詰め込むやり方は、今も変わっていない」と証言する。
「F35戦闘機や無人偵察機グローバルホーク、(ミサイル防衛に使う)イージスシステムなど、日本は高価な装備品を好むようだ」
そう指摘するのは元米海兵隊大佐で日本戦略研究フォーラム上席研究員のグラント・ニューシャム氏。例に挙げた兵器はいずれも米国製だ。政府は来月、一九〜二三年度の新しい中期防を決定するが、ニューシャム氏は戦略的視点が欠けているとする。
「必要なものが何か。包括的・体系的に評価しないまま兵器を購入している。買うだけでなく、金額に注意を払い、必要に応じてお金を使うべきだ」