保育の現場 人手不足、パワハラ…ストレスか 「本当は子ども一番に考えたい」 - 東京新聞(2018年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000146.html
https://megalodon.jp/2018-1116-0941-19/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000146.html

「本当はみんな、子どもの立場に立った保育がしたい」。アンケートに回答した一人、神奈川県内で働く保育士の女性(30)は、苦しい胸の内を語った。
「ギャー」。数カ月前、担任する一歳児クラスから、男児の悲鳴のような泣き声が聞こえた。別の保育士に引き継いで帰宅しようとした時だった。続けてその保育士の怒鳴り声。慌てて部屋に戻り、保育士に声を掛けたが、何事もないように振る舞われた。
翌朝、男児の左腕には、強くつかまれたようなアザが。園長に事情を聴かれた保育士は、翌月辞めた。
別の保育所では、年配の保育士が、トイレに失敗した一歳の女児を突き飛ばし、電気を消した暗いトイレに閉じ込めた。泣きやまないと、自分の握りこぶしを女児の口に押し付けて黙らせた。女性は「ひどいと思ったが、ほかの子の世話で精いっぱい。何も言えなかった」。副園長に報告したが「あの先生がするわけがない」と問題にされなかった。
国の基準で保育士一人が見る園児数は、認可保育所ではゼロ歳児が三人まで、一、二歳児六人、三歳児二十人、四、五歳児は三十人。現場を回すぎりぎりの人数で、トラブルなどで誰かがかかりきりになると、ほかの保育士が見る子どもの人数が増える。
女性も、十五人の二歳児を約一時間半、一人で見た経験がある。子どもたちがあちこち動き回り、けんかも始まった。「『ここに座っていて!』と強く叱ってしまった。何かあってはいけないという緊張感でつらかった」と打ち明けた。
都内の認可保育所で働く女性(53)は、公園で他園の保育士が散歩用のカートに園児を大勢乗せ、怒鳴っているのを見かける。砂場内だけで遊ぶよう指示し、出ようとすると「言うことを聞かないなら帰りなさい」と叱りつける。
「少ない保育士で大勢の子どもを安全に散歩させるのは大変。子どもを一番に考えられる保育ができるように、人手を増やして」と訴えた。