(余録)ホームに立つと、耳慣れない外国語の放送が聞こえてくる… - 毎日新聞(2018年10月22日)

https://mainichi.jp/articles/20181022/ddm/001/070/162000c
http://archive.today/2018.10.22-020751/https://mainichi.jp/articles/20181022/ddm/001/070/162000c

ホームに立つと、耳慣れない外国語の放送が聞こえてくる。タイ語スウェーデン語、ロシア語……。もちろん中国語や韓国語もある。多国籍の街、東京・新宿のJR新大久保駅。流れる言語の数は20を超える。
放送は「階段や通路は右側を歩いてください」。駅で右側通行が守られないと事故が起きかねない。外国人が大幅に増えたことによる影響だ。かつてこの街はコリアン一色の印象だったが今は違う。日本で学ぶ各国の若者を迎える日本語学校が集中する。
その日本語学校について法務省は設置基準を厳しくした。就労目的の留学生を安易に呼び込まないようにするためだ。一方で、外国人の労働力に頼らないと日本社会は立ち行かないところまできている。
日本で働く外国人は増え続け、127万人を超えた。だが、日本語ができずに社会に溶け込めない人が多い。近隣トラブルも絶えない。生活に欠かせない日本語教育を支援する国の制度をどう充実させるかは大きな課題だ。
とりわけ子供への学習支援は大事である。熱心な自治体はあるものの、まだ不十分だ。共生社会をどう築いていくのか。観光でお金を落としてくれたり、日本人が嫌がる仕事をしてくれたり。そんなことばかり求めていては、本当の国際化とはいえまい。
時折、電車の中で日本語の学習ノートを広げ、黙々とペンを走らせる海外の若者を見かける。たいていはアジア系だ。一人の女性が「魚」の付く漢字をいくつも書いて覚えていた。心の中で応援した。