(時時刻刻)加計氏、疑問に答えず 愛媛県文書に「首相と面会」、部下の作り話主張 - 朝日新聞(2018年10月8日)

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13714298.html
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説明責任を果たしてほしい――。愛媛県議会の決議を受け、加計(かけ)学園の加計孝太郎理事長が7日、2度目の会見に臨んだ。だがその中身は、説明不足が指摘された6月の初会見と実質的に同じ。問題の発端となった愛媛県の文書自体を見ていないとも答え、多くの疑問は解消されなかった。
「常務が勇み足をした」
愛媛県文書に記された安倍晋三首相との面会。加計氏はこの日も、学園常務理事を務める渡辺良人事務局長の作り話だったというこれまでの説明を繰り返した。その渡辺事務局長はこの日、「処分中」との理由で会見の場にいなかった。
加計氏は面会について「記録を調べてもらったがないとのことだった」と話した。出張記録や日程表を調べたという。当日どこにいたかは「覚えていない」と述べ、面会を否定する根拠を重ねて問われると、「記録がないからとしか言いようがない」と答えた。
加計氏と首相が2015年2月25日に面会し、首相から「新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントがあった――。県文書は、学園から同年3月にそんな報告があったという内容だ。
事実なら、新設計画を知ったのが「17年1月20日」という安倍首相の答弁と矛盾する。加計氏は6月、岡山市の学園内で初めて会見を開いて否定したが、参加記者を地元に限定して25分で打ち切り、愛媛県中村時広知事も説明不足を指摘する中身だった。
説明責任を果たすよう求める愛媛県議会の7月の決議を受けて開かれたこの日の記者会見。ポイントは面会がないと成り立たなくなる県文書の記載がいくつもあることだった。
渡辺事務局長は県庁に謝罪に訪れた際、「ふと思ったことを言ったんじゃないか」と釈明したが、県への報告の場はそもそも理事長と首相の「面談結果等について報告したい」(県文書)という学園からの申し出で設けられた。
別文書には「首相と理事長との面会が実現しない」「理事長が総理と面談する動きも」などと、もとから学園が首相に接触を試みていたと取れる記載がある。
さらに、「面談」について県に報告した後に作られた文書には、理事長と首相の面会を受けて柳瀬唯夫・首相秘書官(当時)から資料を提出するよう指示された、という記載もある。
7日の会見でこれらの文書の記載に質問が及ぶと、加計氏は「県の文書なので、我々が関知することではない」と話していたが、文書を見たのかと聞かれると「聞いております。見てはおりません」と明かした。
6月の会見では、他の疑問も浮かび上がっていた。
首相との関係については、加計氏は「仕事のことを話すのはやめようというスタンスでやっている」と話したが、首相は「新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨のお話は聞いた」と答弁している。加計氏は7日、「私の記憶では総理に話をしたことはないと思いますけれどもね」といったん話したが、首相答弁を引いて問われると「そういう風に言われればしたことがあるかもしれない」と答えた。
初会見では学園職員と首相周辺の面会を否定し、学園関係者らと15年に3回面会したという柳瀬氏の証言とも矛盾。加計氏は「存じておりませんという意味で申し上げたんだと思います」と釈明した。
今回の会見で説明責任は果たせたかとの質問に、加計氏はこう答えた。「県が判断することだと思います」

■県議「物証示して」

獣医学部の新設は愛媛県今治市が国家戦略特区に申請して実現した。愛媛県今治市で計約93億円を学園に補助する計画で、3分の1は県が負担する。
説明責任を果たすよう求める決議を7月に全会一致で採択した愛媛県議会。鈴木俊広議長は「しっかりと内容を精査したうえで後日コメントを出したい」と話した。
ただ、県議会からはすでに会見内容を疑問視する声が出ている。加計問題を追及してきた福田剛県議は「県側は県文書という物証を出したのだから、学園側も物証を示して反論する必要がある。『記憶がない』『記録がない』では信用性は高まらない」と述べた。
中村時広知事も加計氏に再び会見を開くよう求めてきた。県関係者によると7日は政務などで県内を回っていて記者会見の内容の報告を受けておらず、9日午後に取材に応じるという。

■野党「誠意感じぬ」

あまりに中身のない会見――。問題を追及してきた野党側は一斉に批判した。
立憲民主党福山哲郎幹事長は記者団に対し、加計氏が愛媛県文書を読んでいないことや、当時、柳瀬氏や県、今治市の関係者と面会を重ねていた渡辺事務局長が会見を欠席したことを指摘。「何のための会見だったのか。反省も誠意も全く感じない会見で、より疑惑が深まった」と話した。臨時国会では予算委員会で集中審議を開き、加計氏や渡辺氏らの招致を求める考えを示した。
国民民主党玉木雄一郎代表も朝日新聞の取材に、「愛媛県から補助金がもらえないかもしれないから会見しただけで、(国民に)納得してもらうための再調査などを全くしていない」と批判。共産党小池晃書記局長は会見の時期について「自民党総裁選後のタイミングを計ったとみられても仕方ない」と指摘した。
与党側からも疑問の声があがる。自民党の閣僚経験者は「なぜこの時期に会見したのか。野党に(臨時国会での)攻撃材料を与えるだけだ」と首をかしげた。中堅議員は「安倍首相への不信感は根雪のように解けないが、野党もモリカケ問題を追及しても支持率が上がらない」と肩をすくめた。