反セクハラ声上げよう 国際俳優連合がシンポ、日本初開催 - 東京新聞(2018年9月29日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018092902000151.html
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海外の俳優が相次いでセクハラなどを告発する中、日本でも芸能界の労働環境改善を求める声が上がり始めている。俳優の権利向上のために活動する国際俳優連合(FIA)と、それに加盟する日本俳優連合(Jau)が二十七日、東京都内で開いたシンポジウムでは、セクハラに抗議する「#Metoo(ミートゥー)運動」を広げて実績を上げている米国の俳優らが「声を上げよう、団結しよう」と呼び掛けた。 (猪飼なつみ、原田晋也)
FIAは六十二カ国の団体が加盟し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)や国際労働機関(ILO)などと連携する国際的な俳優団体。俳優や声優でつくるJauは、俳優の西田敏行が理事長を務めている。
FIAの各国の代表者が日本に集まり、シンポジウムを開催するのは初めて。十九カ国が参加し、日本の俳優ら四百人が来場した。二〇一六年、ブラジルでのシンポジウムで、Jauが国内の俳優たちの地位の低さを説明すると、FIAは「日本の状況は世界的に問題がある」と捉え、東京開催が決まったという。FIA会長でカナダの女優フェーン・ダウニーは「日本の俳優に、FIAがあなたとともにいるということを知ってほしい」と呼び掛けた。
Jau副理事長で、シルベスター・スタローンポール・ニューマンハリソン・フォードらの吹き替えなどで知られる声優の羽佐間道夫は「日本の実演家は所属プロダクションのあっせんで仕事をしている。背景が怪しげな事務所もある。加害者が地位を利用して仕事と結びつけたセクハラもある。防御策に良い知恵はないか」と訴えると、米国の俳優組織「SAG−AFTRA」会長で、女優のガブリエル・カーテリスは、#Metoo運動は昨年から始まったわけではなく、すでに一九九〇年代にあったことを説明。
「当時と今の違いは、世界が耳を傾けているということ。声を上げて未来をつくりましょう。そしてセクハラと戦うことができなかった法は変える必要がある」と強調した。
テレビ時代劇「水戸黄門」の悪役などで知られる内田勝正副理事長は、出演作がDVDで販売されたり、ネットで使用されたりしても二次使用料が俳優たちに支払われないことを問題提起。「日本では出演時に放送再利用料を受け取る権利を放棄する契約をしなければ、出演の機会を失う。これはパワハラの疑いがある」と投げかけ、「私は二十年出演していますが、再放送されても(使用料は)入ってこない」と話した。
米俳優デビッド・ホワイトは「(ネット配信の)ネットフリックスが日本でも(番組を)制作している。団結し、要求していかなければ」と力説した。デンマークからは、俳優たちの全収入の25%が二次使用料であることが報告された。Jau側もきちんと声を上げて主張することの大切さを改めて認識していた。

◆遅れている日本、法整備や団結を
Jau専務理事・声優 池水通洋に聞く
世界各国に比べて、日本はどんな点が遅れているのか。Jau専務理事で、ナレーションなどで活躍する声優の池水通洋(みちひろ)に聞いた。

−各国の状況は。

1980年、ユネスコは「芸術家の地位に関する勧告」を出した。俳優や声優も含まれ、収入や社会保障の面で不安定な状況を是正するための勧告だ。これに基づき、例えばカナダでは、芸術家側と制作者側が対等に協議するための法律を制定した。両者の間で国の委員会が裁定している。米カリフォルニア州では、タレントあっせん業者が業務を行うためのさまざまな規定を定めた法律がある。タレントとのトラブルを防ぐためです。

−日本では。

俳優たちを守るための法は、何もないと言っていい。国はユネスコの勧告に対し「法的拘束力はない」という立場のままです。

−そのことで弊害は。

法律のある国でもパワハラやセクハラが問題になっている。ましてや日本では表にも出てこない問題がたくさんあるのではないか。日本でも、ディレクターが「仕事をあげるから」と若い女性に関係を迫ったり、事務所の人にホテルに来るように言われたりして悩む人の話を聞く。相手側と協議するシステムはない。悪徳な事務所も多く、給料の不払いや遅配の話もある。

−今後必要なことは。

日本の対応は各国に比べて遅れているし、文化に対する理解が足りない。法律で俳優や声優を守ることが必要。それから、会員が16万5000人いて、俳優はほとんど所属しているという米国の組合「SAG−AFTRA」のように、日本でも団結することが大切です。