<金口木舌>車いすの大統領と『遅刻』の大統領 - 琉球新報(2018年9月28日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-809290.html
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国連総会の一般討論演説。1番手のブラジルの後に演説予定だったトランプ米大統領が現れない。遅刻だった

▼順番が急きょ繰り上がり、演台に車いす用のスロープが準備された。登壇したのは、南米エクアドルモレノ大統領。約20年前、強盗に銃で撃たれ、両足の自由を失った「車いすの大統領」だ
▼痛みや車いすを通し「心の目で見るようになり、今までと別の現実、世界を知った」と語る。障がい者の権利をはじめ、女性や子ども、先住民族が直面する不平等を語り、人々の幸せと平和の追求のために、国連の重要性を訴えた
▼視界が変わると、世界の見え方が変わる。電動車いすで生活する伊是名夏子さんによるエッセー連載「100cmの視界から あまはいくまはい」は多くの気づきを与えてくれる。街中の不便さや心ない視線。それを変える心遣いや魔法の言葉と、自由、多様性の大切さを痛感する
▼「遅刻」のトランプ氏は就任以降、「歴代政権より多くのことを成し遂げた」と自慢から始め、国際協調に逆行する演説をした。安倍晋三首相は自由貿易でウィンウィンな関係を続けたいと米国にラブコールを送った
▼両首脳の「視界」は、さまざまな問題に直面する国際社会にどう映るのか。必要なのは、自画自賛や従属関係より、多様な人々と手を取り合い、話し合い、進むことであるはずなのに。